タイ プーケット・バンコク

 生まれて初めて東南アジアと呼ばれる土地へ行ってきた。
タイ プーケット→バンコク。

 我が職場では、夏休みをある程度自由に取らせてもらえる。
そこで、9月の最初の3連休に夏休みをくっつけて旅をすることにしたのだった。
旅行会社へ行き、パンフレットを見て、「プーケット・バンコク6日間の旅」という謳い文句の、
一般に格安ツアーと呼ばれるものに申し込んだ。
タイはこの時期雨季で一応シーズンオフだそうだが、だからといって特に安いわけでもないらしい。
しっかりそれなりの代金を払った。
そして、「6日間」という文句だが、ちょっと詐欺に近いものを感じた。
何せ、6日間の1日目は、国内の空港で手続きをするだけで終わり、6日目はかなり早朝日本に着いたのだから。
行きは、実際に飛行機が出発したのは日付が変わってからで、無理やり「6日間」を実現させるために
不必要に早く空港へ行かされたような観があった。

 簡単なスケジュールを記すと
9/11:夜遅く空港に集合
9/12:朝プーケットの空港着→象乗り→変な宝石店→変なサプリメントストア→フルーツマーケット
    →ホテル→プーケット動物園
9/13:朝から夕方までずっと船に乗って魚釣り
9/14:午前中バンコクへ移動→午後ホテル着→少し電車に乗って周辺探索
9/15:電車とチャオプラヤ川の渡し舟を活用して夕方まで寺院巡り→ホテル
    →バンコクの空港→飛行機で出発
9/16:早朝日本着
という具合で、実際に動けたのは4日程ということになる。

 2日目、象乗りという言葉のみに惹かれた私が何も考えずにオプショナルツアーなるものに申し込んだせいで、
変な宝石店やわけのわからないサプリメントストアなどというところに連れて行かれてしまった。
私はそういうものにはまったく興味がない。
だが、象に乗るのは楽しかったし、変な宝石店に行ったときは自分が本当に観光客なのだと思わされてそれなりに楽しかった。
わけのわからないサプリメントストアにしても、こんなことでもない限り絶対に足を踏み入れることはなかっただろう。
貴重な体験だと思えば、それもよし。
フルーツマーケットがオプショナルツアーの中に組み込まれていたのも何の意味があったのかわからないが、
次から次へと試食させられた挙句、こちらの希望する果物を1kg分袋に入れてくれた。
但し、配分はマーケット側の自由らしく、こちらが最も希望した果物は1個しか入れてくれなかった。
プーケット動物園は文句なしに楽しかった。
日本の動物園の動物達よりずっと生き生きしており、ラクダの檻のところでは柵のドア部分が開いていて
ラクダが望めば簡単に外に出られそうだった。
触れそうなくらい動物の近くまで寄ることができたし、人懐こいオウム(?)などは誰が教えたのか
近づくと寄ってきて不明瞭ながら『こんにちは』と話し掛けてくれた。
各種ショーもなかなか面白く、特にエレファントショーなどははちゃめちゃだった。
ショーというよりも、遊んでいるところを観客に見せているかのような、伸び伸びとした雰囲気だった。

 日本の旅行会社を通して申し込んだオプショナルツアーはフルーツマーケットまでだったので
旅行会社の現地の車で一旦ホテルへ送り届けられてから動物園へ行った。
ホテルでタクシーを呼んでもらったのだが、タクシーの運転手さんはとても気のいい人で、
追加料金等一切なしで往復しようかと提案してくれた。
何時くらいまで動物園にいるかと尋ねられ、大体の時間を伝えると、その頃迎えに来ると言ってくれた。
万一のときのために名刺をくれて、料金も最後でいいと言ってくれた。
結局予定より30分ほど早く動物園を出たのだが、タクシーは既に待っていてくれた。
全行程が、日本では絶対に考えられないことだと思った。

 3日目は一日中船に揺られて魚釣り。
魚釣りは特に私が希望したものではなかったが、やはり海は綺麗だった。
お昼を過ぎた頃、ある島の近くで一旦ボートを停めた。
島に上陸することはできなかったが、ボートの案内人がボートの上で軽食を作ってくれ、
それを食べてから少し泳いだ。
透き通った水中には黄色の魚が見えていた。
ボートの縁から水中に入ろうとすると、ボートの案内人が魚寄せのつもりか、食べ残しのピラフ等を海に捨て始めて驚いた。
魚が寄ってきてピラフを食べていたが、海には油が浮いている。
海に入るのが躊躇われ、しばらく時間を空けてからにした。
自分が気持ち悪いのもさることながら、あんなことをしていては、せっかくの綺麗な海も
遅かれ早かれ汚くなってしまうに違いない。

 釣りは日本の旅行会社を通したツアーではなかったため、現地の人の案内で行われた。
ボートに乗った人々も日本人よりも外国人の方が多く、我々の乗ったボートには
我々の他にニュージーランドから来たという陽気な人達が3人幅をきかせていた。
そのうちの一人は帰りの航路で豪快に船酔いしていたが、残りの二人は特に心配する様子もなく
逆に楽しそうにからかっていた。
釣果はさっぱりで、行きの航路でカツオが2匹かかったものの、帰りの航路ではまったく当たりがなく
案内人に至ってはほとんどずっと惰眠を貪っていた。
私はさっぱり釣れなかったが、私の同行者はカツオ以外にも、非常に原始的な釣り道具を使った釣り方法で
数匹魚を吊り上げていた。
一度などは餌にくいついた魚の頭を釣り上げて、自然の生態系を垣間見た気がした。

 4日目は朝ご飯を食べてから飛行機に乗ってバンコクへ移動。
旅行会社の車で渋滞に巻き込まれながらホテルへ到着した。
電車に乗って少し周辺を探索することに時間を費やした。
電車マニアでもないのに電車の写真をとってみたり、切符の写真を撮ってみたり。
私はマクドナルドが好きなので、マクドナルドを発見して入った。
他国と比べると、やはり日本のドリンクは小さいといつも感じる。
メニューはほぼ同じ、ハンバーガーの大きさも味も同じだった。
大きさと味は万国共通らしい。

 5日目は、せっかくバンコクへ来たのだからということで寺院を見学に行くことにした。
電車を乗り継ぎ、更にチャオプラヤ川を渡る船に乗って、ワットポーというところへ。
私はお寺には興味がないので申し訳ないながらその本当の良さはわからないが、私なりに楽しんだ。
寺院見学に少しくたびれた頃、見知らぬおじさんに手招きをされた。
何事かと思ってついて行くと出口から道路へ出た。
これからどこへ行くのかと聞かれたので別の寺院の名前を告げると
その寺院は日曜・祝祭日は午後からしか開いていないと言われた。
そこへ、仲間らしき別のおじさんがやってきて、最初のおじさんはどこかへ去った。
仲間らしきおじさんが地図を出せと言うので地図を出した。
おじさんは人の地図にペンで勝手にごちゃごちゃと書き込んだ。
今からお前達が行こうとしている寺院は午後からしか開かない。
こことそこの寺院は無料で入れる。
今からその2つの寺院に案内してやる。
その間にあるタイファクトリーにも連れて行ってやる。
おじさんが喋っている間に、最初のおじさんが乗り物に乗って戻ってきた。
なるほど、これがトゥクトゥクという乗り物に観光客を乗せる手口なのか。
あまりにも鮮やかな手口に舌を巻いた。
だが、残念ながら私はタイファクトリー(観光客を相手にしつこく売りつける宝石店)には興味がなく、
いや、社会見学のために行っても構わないのだが、しつこく付きまとわれるのがたまらなく嫌で
トゥクトゥクには乗ってみたかったのだが、断った。
その後、純粋な私達はトゥクトゥクのおじさん達の言ったことを信じて午後まで時間を潰してから寺院へ行ったが、
どうやら騙されたらしいということがわかった。
毎日朝から夕方まで開いていると書いてあったからだ。
これじゃ、詐欺だ。
いくら宝石店へ連れて行きたいからといって、無垢な観光客を騙すのは感心しない。

 人間というものは不思議なもので、さすがに疲れているはずなのにまったく疲れを感じないまま
その日の晩、バンコクを去って日本へ帰ってきた。
疲れたと感じたのは、6日目の早朝日本に着いて電車に乗ったときだった。
頭で楽しいと思っているときというのは本当に疲れを感じないものなのだということを実感した。



 総じて楽しかった。
旅行会社絡みのことでいくつか不愉快な思いをさせられたことはあったが、
旅行会社さえ我慢すれば、本当に楽しかった。
私が見たのはタイのほんの一部だけだが、例外が原則の国だった。
そう思ったいくつかの要因を挙げると、
・巨大な野良犬が交通量の多い車道の交差点のど真ん中であごを突き出して寝ており、車が通ってもどこうとはしない。
逆に、車やバイクが犬を避けて通っていた。
・警察は当たり前のようにバイクで歩道を走っていた。
・何かのお店の店員さんは外で寝たり新聞を読んだりしていた。
・薬屋さんで薬を買い求めると、バラ売りしてくれる。= 説明書がない。
・小さなバイクの二人乗りは普通で、3人4人乗りをしていたり、首も座っていないような赤ん坊の腕を
バイクを運転している女の人の首に回し、後ろで男の人が赤ん坊の首とお尻を支えているような光景も見られた。
・小さな子供を裸でバイクの後ろに乗せていても平気だし、どこかのレストランで使っていそうな木でできた椅子を
どこにも固定せずにバイクのサドルとハンドルの間にちょんと乗せて、子供を座らせている人もいた。
・日本ではあまり見かけることはないが、ピックアップの車が盛んに走っていて、その狭い荷台には十数人の人間が
立ったり座ったり思い思いの格好で乗っていた。
中には、荷台の後ろの蓋部分を開けて、そこに後ろ向きに足を垂らして乗っている人もいた。
・数人乗りをしているバイクは日本の自転車並みに一般道路を逆走していた。
・豪華な造りのホテルの部屋の窓から見下ろせば、ホテルのすぐ裏にはスラム街が広がっていた。
・トゥクトゥクの運転手は宝石店から報酬をもらいたいがために観光客を騙し、その宝石店というところでは
誰が教えたのか、世にも怪し気な日本語で『おねーさん、見るもただ、つけるもただ』などと商売をしている。
・日本の都心よりもずっと空気の悪いところで小さな少年が裸でうろうろしているし
道端で露店を出しているおばさんは地べたに埃だらけの子供を座らせて食事をさせていた。
・道を走るタクシーは、ショッキングピンクや赤など何とも目立つというか色とりどりだった。
・車は、どう見ても通ってはいけなさそうな道をするっと抜けていくし、
レーンチェンジをするときはウィンカーを出さない。
ウィンカーは「入れて」というサインではなく「どけ」というサインらしく、ウィンカーを出したら強引にレーンを変更するので
元々走っていた車は別のレーンに移動せざるを得ない。
驚きの連続だったが、バランスの取れた国だと思った。
日本はバランスが悪い。
簡単に言うと、やっていることは発展途上国と同じなのに先進国であるかのように振舞うのでバランスが取れないのだと思う。
うまく書ききれないのがもどかしいが、日本人は身勝手で利己的だと痛感した。
そして、その原因を自分なりに追究してみると、どれだけ考えても結局国が悪いのだと言わざるを得ない。
こんなバランスの悪い国においては人間の心に歪が生じるのも仕方のないことだと思われる。

 私は旅行に出て観光をして無邪気に楽しんで、それで終わり、ということができない。
絶対にいろいろと考えてしまう。
それ故に、元の場所に帰ってくると今まで以上にストレスを感じる。
性格なので仕方がない。
だが、それが悪いことだとは決して思わない。
今回も、楽しいながらいろいろと考えさせられるところの多い旅だった。






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