解析

彼女が数年前初めて派遣として我が社の我が部に来たとき、まずい、と思った。
私が一番嫌いなタイプ。
格好だけ清楚系きらびやかで小奇麗で、仕事ができる人を装ってはいるが完全に見かけだけ。
絶対に仲良くなれないと思った。
だが、昔から人を第一印象で判断し決定づけてしまう癖のある私に、親は未だに口を酸っぱくして言う。
人を第一印象で判断してはいけない、とりあえずその人のいいところを探しなさい、
だめだと思っても最初から遠ざけてはいけない、と。
絶対に無理だとずっと親の教えを退けてきたが、私ももういい大人なのだから少しは我慢強く寛容に幅広く
物事を捉えることも必要だろうと、親の教えに従ってみることにした。
4年程実に必死で頑張って我慢した。
一生懸命彼女のいいところを探す努力をし、できるだけ丁寧に親切に接することを心がけ、お昼休憩なども一緒に過ごすようにし、
彼女の物の考え方を理解する努力をした。
だが、その結果は惨憺たるもので最終的には拒絶反応しか示さなくなり、精神的にもう無理だと判断して
公私共に彼女から少しずつ離れることにした。
今は仕事上やむなく話をする以外口をきくことはなく、できるだけ顔も合わせないようにし、
彼女が喋っているときは可能な限り耳を塞ぐことにしている。
にも関わらず、私は彼女のことが嫌で嫌で仕方がない。
もはや気にしなければ気にならない程度にしか関わりがないのだが、彼女の存在が耐え難い。
彼女がどういう人間か、私が彼女のどういうところが嫌いか、全ては書ききれないのでほんの一部を書いてみようと思う。
書き出すことによって自分が何故それほどまでに彼女を嫌うのか整理できれば、もしかすると苛立ちを抑える助けになるかもしれない、
というのが趣旨だ。



・いろいろな種類の強力な匂いが全てひどくて入り混じってずっと恐ろしい臭さに苛まれる
 毎朝、出社し席に近づいてきた時点で香水の匂いが鼻を衝いてむせる。
 更に、強烈過ぎる匂い(匂い自体は悪くない)を放つハンドクリームを一日に何度も塗りたくるので息ができなくなる。
 その上、これまた甘ったるく強い匂いのするリップクリームを塗ることがあり、
 数種類の匂いが入り混じって悶絶するかと思うことがしばしばある。
 匂いがひどくて頭が痛くなるので机の上に置いている小型扇風機でこっそり空気を攪拌するのだが、
 匂いが充満していて攪拌しきれない。


・言葉が全般的にとにかくひどい
 敬語の使い方がめちゃくちゃ
 普通に喋ればいいのに、自分を上品で丁寧でできる人に見せようとするあまり、どのようなときでも無理やり敬語を使う。
 そもそも敬語の使い方を知らないのだが、誰かが極上の敬語(丁寧語)を使うとすぐに真似をして自分のものとして使いたがる。
 その結果常識では到底考えられない組み合わせの、もはや慇懃無礼の域をも超える敬語が次々と飛び出す。


 「よろしかったでしょうか」・「大丈夫です」「もしアレだったら」「こちら」を連発する。
 最近流行りのようだが、「よろしかったでしょうか」という言葉を連発する。
 例: 『○○社の△様でよろしかったでしょうかぁ』など。
   また、「そのようにお願いします」「それで結構です」と言いたいのであろうところを「大丈夫」と表現する。
 例: 相手の『ご担当は□□様でよろしいでしょうか』という問い(推測)に対して『はい、大丈夫ですぅ』と答える。
    『▲▲のようになってしまうんですけどぉ、大丈夫でしょうかぁ』など。
 言葉を濁して感じよく見せるために言っているのかもしれないが、1会話に1回は使うことが多い。
 例: 『もしアレだったらぁ〜、▽◇して戴いてぇ〜〜、と思うんですけどぉ〜〜』など。
 言葉を華美に飾り立てるために「こちら」という言葉を乱用する。  例: 『そうしましたらぁ〜、そうですねぇ〜、えっとぉ、こちら一度◎○●しましてぇ、確認致しますのでぇ〜、よろしかったでしょうかぁあ』など。
 言葉の頭に「あ、」をつける
 半裏返った声で『あっ、はい』『あっ、ううん』『あっ、えっとぉ』などといちいち耳障り。

 意味もなく「かしこまりました」・「えっとぉ」という言葉を連発する
 例:取引先からの電話で、☆☆についての問い合わせはこの番号でいいのか、という問い合わせに対して
    『えっとぉ〜、かしこまりましたぁ、それではですねー、えっとぉ…』など。

 社外の人間に対してでも平気で言い訳がましく恩着せがましい物の言い方をする
 『えっとぉ〜、かしこまりましたぁ、それではですねー、今◇◇部にお電話頂戴しておりましてぇ〜、
 こちらではちょっとわかりかねるんですけれどもぉお。
 (何故かここで相当の間を空ける)
 そうしましたらあ、そうですね、えっとぉ、一度担当の者をお調べ致しましてぇ、
 担当の者から折り返しご連絡させて戴きたいんですけれどもぉ、よろしかったでしょうかぁあ』

 言葉の最後に「ですね」をつける
 「えっとですねぇ」「そうですねぇ」「それではですねぇ」「〜させて戴きますのでぇですねぇ」等
 何にでも「ですね」をつける。

 語尾を伸ばす
 ただ伸ばすだけでなく、不満そうに(不満そうに聞こえるのは語尾を下げるからか?)伸ばすことが多い。

 長い話でも文章を終わらせることなくだらだらと妙な言葉遣いで喋り、最後を「けど」で終わらせる
 『えっとぉ、先日ご連絡戴きましたぁ、○の件なんですけどもぉ、えっとぉぉ、★したんですがぁ、■だったのでぇ、
 えっとぉぉ、□しようとしたんですけれどもぉ〜〜〜、◇できなくてですねぇ、もしかするとぉ、◎かもしれないんですがぁ、
 こちらではちょっとわかりかねるんですけれどもぉ、それでぇ、えっとですねぇ、もしアレだったらぁ、えぇっとそうですねー、
 一度そちら見て戴いてぇ、ご検討して戴いたうえでぇ、またご連絡して戴けたらと思うんですけどもぉ』など。

 舌っ足らずな喋り方をする
 常に耳に纏わりつくような喋り方をし、「も」を「むぉ〜」と発音、「よ」を「ぉ〜」と発音。
 「す」を僅かに「しゅ」と発音する。
 例: 『○○なんですけどむぉ〜〜』・『○○なんです(しゅ)ぉ〜〜』


・頑張ろうという意思はあるが弱いので頑張れない、と自らを正当化する
 普段から主な移動手段は車で、通勤時家から駅まで行くのは原付か親に車で送ってもらう
 という生活を送っているというのに友達に誘われたからといって富士山に登ることにした、とある日教えてくれた。
 ジムに通ってトレーニングを始めたと得意気に言うので、急に運動すると膝を痛めるよ、
 と注意すると、大丈夫大丈夫とのこと。
 それからしばらく経って富士山のふの字も言わなくなったと思ったら、トレーニング中に足を痛めて
 富士山は断念した、と自ら教えてくれた。
 でも、実は小さい頃から体が弱くて運動ができなかったのだ、今回足を痛めたのも決して急に運動をしたからではなく
 昔から弱かったからなのだと力説して、仰々しく包帯で巻かれた湿布を貼った膝を見せてくれた。


・自分は何もできないくせに自分と少しでも関係のある人の自慢をする
 自分の父親がどれほど自分に対して優しく思慮深いか
 自分の母親がどれほど夫の従順で子供に厳しく、自分がどれほど厳しくしつけられたか
 自分の二人の兄がどれほど社会的地位が高く努力家で優秀で自分をかわいがってくれて優しいか
 と、ここまではまだいいとして、


 自分の友達が何の仕事をしていてその友達が言ったこと、とか、どこそこ(一流企業)に勤めている友達がいるのだがとか、
 自分の知人の話をする際は必ず職業や勤め先を言う。

 何人いるのか知らないが、元彼の話をするときもまず肩書きから入る。

 『今日さ〜ぁあ、▼▼人(外国人)の○◆会に行くねん〜』『は?』『その人、○▲社(一流企業)の人なのぉ』 
 などと得意気に話せば、今付き合っている人が○▲社に勤めておりその彼に誘われて
 ▼▼人の○◆会に自分も参加する、という意味になる。

 親の希望で頻繁にお見合いをするようなのだが、誰も何も聞いていないのにお見合いをした相手の職業を必ず教えてくれる。
 サラリーマンであれば、必ず一流企業の名前を挙げる。
 『昨日お見合いした人がぁ、お医者さんだったんだけどぉ、お父さんがぁ、すごく気に入ったみたいでぇ、
 あ、××(自分のことを名前で呼ぶ)はぁあんまりいまいちかなぁ、みたいなぁ あ、悪い人じゃないんだけどぉ、
 ちょっとどーなん、みたいなぁ、うふふふっ』など。 
 更に、お見合いの相手が気に入らないと言っておきながら『この間お見合いした人とぉ、▲■ホテル(超一流ホテル)でぇ
 ディナーしたんだけどぉ・・』と食事内容(周りの人の反応から、超豪華なメニューらしいことが伺い知れる)など
 微に入り細に渡って事細かに説明する。

 会社の男の人にプライベートでクラシックのコンサートに誘われたということであれば、
 その部署の幹部社員もそのコンサートに来る、という話になる。

 いきなり『△■部署のぉぉ、×▲統括(部長)が言ってたみたいなんだけどぉ』とどうでもいい内容の話を
 敢えて肩書きのある人物の言葉として話し始めることもしばしば。

 本人がしたことに対して、すごいでしょ、褒めて、羨ましがって、と言われればまだ可能なこともあるかと思われるが、
 本人は何もしていないしできないので始末が悪い。

 常にストレートに自慢するというわけでもない。
 『お父さんがぁ、××(自分)の車を勝手に廃棄しちゃってぇ〜』とぷりぷり怒っているのを受けて
 驚いて見せると『まぁ、お父さんがぁ××(自分)にって買った車なんだけどぉ、でもひどいと思わへん〜?ぅふふふふふ』と。
 軽く流して『じゃ、これからは車なし?』と誰かが聞くと『ううん〜、今、☆△(決して安くはない車種)を注文しててぇええ〜』。
 新しい車は自分のお金で買うのかと尋ねると『ううん〜お父さんが出すよ〜、ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』他。


・興味がないと普段からアピールしてはいるが、社会的地位・知名度・権力などを持つ人に異常なくらい関心を示す
 会社の研修などの後の懇親会の場などで、会社の上層部の人間(男限定)の周りに人垣ができて
 仕事の話や難しい話をしていても、割り込んで最前列に並んで目を真ん丸にしてきらきらさせて頷いている。
 到底彼女に話の内容が理解できているとは思えないのだが、一心に見つめて頷き続ける。


 他部署の幹部社員についても、いろいろな人に『○□部長ってどんな人〜?』と聞き、
 また聞いた情報をあたかも自分が本人を熟知しているかのように得意気に他の人に披露する。

 幹部社員(男限定)の噂話などが始まると必ず率先して話に絡み、自分はその人のこんなことまで知っているのだと
 あれこれ喋って話の中心になろうとする。

 誰かが特殊で社会的地位が高いとされている職業の人の話を始めると、すぐに大きく頷いて『わかるわかる!××(自分)のぉ〜、
 友達もおぉお■▲(その職業)なんだけどぉ〜、その子が言ってたのはぁ〜etc.etc...』と人の話を取って自分の話として話し続ける。
 全く同じ職業の知り合いがいないときでも似て非なる職業の知人の話を持ち出して自分の知り合いの話に持ち込む。


・表裏が激しく、男と女の前で言うことも態度も違い、同性同士でも相手によって態度を変える。
 自分が暇だからという理由で、頻繁に事務所の外に呼び出されて同じ部署の他の女の人の悪口を散々聞かされた。
 具体的な内容のある悪口ではなく、自分のことを棚に上げて、ぶりっ子でむかつく、とか、女であることを武器にしすぎ、とか、
 女女しすぎて気持ち悪い、とか、抽象的な悪口ばかりだった。
 私はその悪口の相手とは別段親しくもなければ仲が悪いわけでもなく、どうでもいい話なので適当に流し聞いていたのだが、
 その悪口の相手が結婚することになったとき、いつ結婚式に呼ばれるほどその人と親しくなったのか知らないが
 彼女も結婚式に呼ばれたらしく、しれっと出席していた。
 私は彼女がその人の結婚式に出るということを知らず、後で第三者から聞いて驚いた。


 彼女は関西人で関西弁を喋るのだが、こちらは何も言っていないのに関西の弁護を始める。
 『すごくいいところもいっぱいあるしぃ、関西弁も好きやしぃ、個人的にはめっちゃ好きなんだけどぉ、
 他府県からはあまりよくないように思われてるみたいなところがあってぇ、結構残念やなぁ、って思うねん〜etc.etc...』
 にも関わらず、出張等で東京へ行くと関西弁は一切使わず、東京の人から『関西人なのに全然関西弁とかイントネーションとかないんだねー』
 などと感心されると『え〜っ、そんなことないですよぉ〜、ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と非常に嬉しそうに笑う。

 少し仲がいいと認識する同性には、堂々と『女の人と男の人とでは同じことは言えないよね〜』と明言し、
 男の前では唇に目を真ん丸に見開いて『女の人とぉ〜男の人の前でぇ〜、態度とか言うこととか変える人がいるじゃないですかぁ〜、
 めっちゃキモいしぃ〜。私は絶対無理ぃ〜』などと言う。
 また、自分を賛美して崇拝する男に対しては、きつい口調で『そんなことあんたに言われたないわ!』などと八つ当たりすることもあると聞く。


 

・無神経で、且つ仮に人に迷惑を掛けていることがわかっても何とも思わない。
 後で廃棄しようと机の端に置いておいた書類(大きく×をつけて一目で廃棄書類とわかるようにしてあり、
 机の真ん中は大きくスペースを空けてある)の上に、同じ形状の必要な書類をわざわざ丁寧に重ねて
 本人がいない間か本人が気づかないように置いて去る。
 但し、それは目上の人や普段から媚を売っている相手などに対してはやらないので、もしかするとわざとなのか?


 見るからに大事な打ち合わせをしている人宛の内線電話を取ったときなど、その人が真剣に打ち合わせをしているにも関わらず、
 割り込んで電話を取り次ごうとする。

 出張に行ったとき、ラッシュの通勤時間帯であるにも関わらず、巨大な旅行鞄を自動改札機のまん前に置いてから切符を買いに行った。
 唖然としたが、慌てて周りの人に謝りながら鞄を引きずってどかすと『ごめぇ〜ん、置いといてくれていいのにぃ〜〜』と迷惑そうに走ってきた。
 また、出張中やむなき事情により彼女と同じホテルに泊まらざるを得なくなり、朝は一緒に行こうと言われ、ロビーの集合時間を決められた。
 ところが集合時間をどれだけ過ぎても来ないのでメールしてみると、身だしなみを整えるのに時間がかかっているので待ってくれという返事。
 先行くよ、と何度もメールするが、待ってて、と。
 後で悪者扱いされてあることないこと他の人に吹聴されてはたまらないので仕方なく待ったが、遅刻ぎりぎりの時間になった。
 既に遅刻ぎりぎりであるにも関わらず、下りてきた彼女は巨大な旅行鞄を持ち運ぶのは無理だからと
 ホテルのフロントに預かってもらえるか聞いてくるから待っていてほしいと、フロントに長蛇の列ができているというのに更に待たせる。
 結局走って走ってぎりぎり間に合ったが、恥ずかしかった。
 そうして自分のせいで遅くなったというのに、みんなの前で私に輝くような笑顔を向けて謝るでもなく大きな声で
 『走らなかったらやばかったね〜。ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と。

 会社のお手洗いの洗面所周りは手を洗った後皆が拭くので真似をして拭くようだが、給湯室のシンク周りは彼女が使った後、汚い。

 旅行に行ったときの話をよく自慢しているのだが、空港で遊んでいるうちに飛行機の搭乗に遅れて
 飛行機の出発を遅らせてしまった、と平気で笑いながら話す。

 身だしなみに気を遣い過ぎる余り、髪型を作るために海外旅行に行くのにわざわざ荷物チェックで引っ掛かる器具を持って行くらしいのだが、
 その器具のせいで毎回荷物チェックで引っ掛かって時間を取られると文句を言う。
 荷物チェックに引っ掛からないようなタイプの代用品もあるらしいが、代用品は嫌なのだとか。

 自分が暇だと、仕事中相手が忙しくてもメールやメッセンジャーで「暇〜」だの「何したらいいんだろ〜」などと頻繁に邪魔をする。
 また、少しでも手が空いているのを見つけると、仕事中事務所の外に呼び出されてそのまま雑談やお散歩に付き合わせる。
 面倒なのでメッセンジャーなど開封せずにデスクトップに置いておくと、自分で開きに私の席までやって来る。

 過去に何度も重要書類において同様のミスプリントをし何度も人から指摘を受けて自分が恥をかかされたと感じたことがあったようで、
 それ以来、彼女はその書類をプリントアウトする際は何故だか全てのページをチェックしているらしい。
 彼女は爪を激しく伸ばしており、普通に紙をめくることができないため、指サックをつけて指の平の下の方で
 思いっきり紙を飛ばすようにしてめくるため、紙の端はかなり大きく折れて傷つく。
 それだけでなく、めくり方に問題があるのか、働いていますアピールをしているのだか、
 紙をめくる度にものすごく派手にばっしゃばっしゃと音がする。
 それが何千回も続き、時間にして何十分にもなるので時折周りの人がちらちら見ることもあるのだが気にも留めていない様子。
 そして、それだけ耳障りな音を立ててちゃんとチェックしているのかと思えばやはり多々間違っていることがあるので、
 ただ無意味に紙をめくっているだけなのだと結論づけざるを得ない。


・嫌なことは人にやらせる。
 少しでも他の人の反感を買ったり人の気分を侵害したりする可能性のあることは、絶対に自分からは言い出さない。
 自分では言わず、自分と親しい人・自分を甘やかしてくれる人・自分の崇拝者に言わせる。
 私は派遣で今の会社に入ってすぐ、当時の幹部社員から正社員にならないかと何度も言われていた。
 彼女は派遣で私の半年後に入ってきたが、誰も彼女に正社員の話などすることもなかった。
 私を正社員にするための手続きに時間がかかって幹部社員が定年で交代したのだが、
 交代した幹部社員が大馬鹿者でかわいい女とイエスマンが大好きだった。
 私は何でも言うのでその幹部社員からは好かれていなかったが、前幹部社員から私を正社員にするようにと厳しく言われていたようで
 ずるずると引き延ばしながらも渋々手続きを進めていたようなのだが、私を正社員にしてしまうと彼女が一人だけ派遣として残って
 かわいそうじゃないかと全く意味不明な筋の通らない理由をつけて彼女をも一緒に正社員にすることにした。
 私はその頃まだ組織という物を信じていなかったので正社員にされても派遣のままでもどっちでもいいや、と思っていたのだが、
 彼女は自分も正社員にしてもらえるかもしれないとわかってから進捗状況が知りたくてたまらなかったらしく、
 私は週に何度も何度も仕事中に呼び出され『セイシャの件どうなったか聞いたぁ〜?
 どうなったのかなぁ。課長に聞いてみてぇ〜。』と懇願され、最初何度かは確認してあげたのだが、
 そもそも私はどうでもいい上に、回数を重ねる毎にどんどん課長の機嫌が悪くなる。
 何回目かに呼び出されて『どうなんやろ〜、聞いてみてぇ〜』と言われたとき、私は興味がないので自分で聞いたらどうかと言うと
 『じゃぁいい。ふしゅしゅしゅ(笑い声)私も別にどうでもいいしぃ。ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と言う。
 だが、その後も断っても断っても懲りずに何度も何度もメッセンジャーや会社のメール、個人の携帯メール、
 顔を合わせたときなどしつこく私に確認を依頼してくる。
 気になるなら自分で聞け、と言うと『やだ。別にどうでもいいしぃ、ちょっと気になっただけだからぁ。ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と。
 その繰り返しが半年程続いて私はノイローゼになりそうになった。
 結局彼女は自分の力で何もしないまま私のおまけとして正社員になったわけだが、中途採用でなかなか入れない会社であるため、
 社外の人間や自力で中途採用された人に感心されることがある。
 『すごいねー』と感心されると『ぃぇぃぇ、そんなことないですぅぅう、たまたまでぇえ、ふしゅしゅしゅ(笑い声)』と謙遜し、
 時には『ねっ、たまたまだよねっ』と、さも同類であるかのように私に同意を求めるのだが、
 自分は自力で正社員になったわけではないということは何がどうあっても絶対に言わない。


・異常なくらい紫外線恐怖症
 会社の真向かい、建物を出てすぐ前の横断歩道を渡った(しかも横断歩道は木々が覆いかぶさってほぼ木陰)ところにある建物
 に行くのに日傘を持って出る。
 お昼休み中など通行人の多い時間帯で、日傘が人に当たってもお構いなし。


 どこかへ車で遊びに行った次の日などに、自分の腕を見つめて『えええ〜、シミができかけてるぅ〜、どうしよーーーっ』と騒ぐのだが、
 私にはその腕のどこをどう見てもシミも何も見つけることはできないのでそう言うのだが、『ううん、あるの!』と強く主張する。
 『昨日友達とぉ、ドコソコ行ったんだけどぉお、それで車を何時間も運転したからやあぁ、一応窓ガラスはぁ、UVカットにしてるしぃ〜、
 腕もぉ、運転するときは絶対手袋してるのに〜、めっちゃショックぅうう、歳とってる人がシミとかあるの、なんか汚くない〜?
 ××(自分)はぁ、歳とってシミがあったら絶対にレーザーとかで取るねん、我慢できないしぃ〜』と延々と紫外線に対する恐怖を話し続ける。


・何もできないのにできるふりをする
 人とお料理の味付けの話をしていると、私の話に納得がいかないようで横で首を小さく傾げて
 『ふぅ〜〜〜ん…そんなことないと思うけどぉ…』などと呟く。
 いい方法があるなら教えて、と言うと『ぅ〜〜〜〜ん…、いい、ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』とごまかす。


 自分はお料理教室に通っていていろいろ知っているしできるのだと常々豪語しており、家事に関することでも誰かがその話題を提供すると
 誰も何も聞いていないのに自分が持っている知識を披露するので普段から家のことをしているのかと思えば、実際は家でも何もせず、
 30を過ぎてお弁当も親に作ってもらって持たせてもらって当たり前の顔をしているような人間だ。

 仕事で郵便物やFAXを配る際も、いかにも自分は率先して仕事をしているという風に迅速に配るのはいいのだが、
 誰宛の物か全く確認せずに適当に思い込みで明らかに担当ではない人に配るため、配られた人がいちいち再チェックして
 正しく配布し直さなければならない。

 人に電話を取り次いでもらっておいて、こちらが電話の相手の名前を言っているにも関わらず遮って面倒くさそうに『はい』『はい』
 と遮るように言って自分の電話に手を伸ばす。
 わかっているのだから早く回せ、と言わんばかりの態度なので早口で相手の名前を伝えてから電話を回すのだが、電話の最後に
 あたかも取次ぎの際に相手の名前までは聞いていなかったかのような口ぶりで相手の名前を聞く。


・体調不良を自慢する
 眩暈、肌荒れ、少々の頭痛などがあると即病院へ行くようなのだが、その度に誰も何も聞いていないのに
 体調に異変があったから病院へ行ったと、症状のみに留まらず、自分が行った病院がどれほど高名な医者がいるかということ、
 どのような治療を受けたかということ、医者に通告された不調の原因(ほとんどがストレスだと言うが、
 遊び疲れとしか思えない生活を送っている)、薬を貰ったが医療に詳しい自分の兄弟がその薬はあまり体によくないと言うから
 飲まないのだということ、などを毎回延々と親兄弟知人の自慢を織り込んで体調不良の内容を披露する。


・自分がいかに清楚で控えめで繊細で上品で高尚でお行儀がよくて丁寧かということをアピールする
 机を挟んでほぼ向かいの人に質問をされたときやちょっとした話をする際、自分の席から回答するのはがさつなので自分にはできないと、
 必ずわざわざぐるっと反対側へ回ってその人の横まで行ってから話す。


 人がペットボトルや缶ジュースなどに直接口をつけて上を向いて飲んでいると、『××(自分)はぁ、ペットボトルとかぁ缶とかにぃ、
 口をつけて飲むのは絶対にできないねん〜、ストローがないと絶対飲めない。お母さんにぃ、あなたお行儀が悪いわよ、って怒られるしぃ、
 なんか気持ち悪くてぇ〜〜、あ、人がやってるのはぁ、全然いいんだけどぉぉ、××(自分)はぁ、ちょっと無理ぃ』と毎回のように言う。

 おにぎりは人が手で直接握ったものは不潔な感じがして絶対に食べられない、親か自分以外の人が直接触ったものは
 気持ち悪くて絶対に無理だとアピールする。

 海外旅行の自慢話で、同じツアーに参加したという日本人の少し年配の弁護士の女の人数名の話を聞かされていた。
 旅先である企画が中止になったとかで、その弁護士さん達が返金交渉をしたらしいのだが、
 『中止が決まったときにぃ、その弁護士さん達がぁ、めっちゃ早口の英語でぇガイドさんに怒ってたのぉぉ。
 多分だけどぉ、お金は返ってくるのか、とかぁ、契約書にはこう書いてある、みたいなことをぉぉ言ってたんだと思うんだけどぉぉ、
 なんかぁ、ものすごくぅお金にがめつい人みたいでぇ、××(自分)は絶対にあんな風にはなれないしぃなりたくないと思ってさ〜ぁあ。
 きゅふきゅふきゅふきゅふ(笑い声)』と。

 そういう彼女は爪を必要以上にに不潔に伸ばし、給湯室などを汚したら汚しっぱなし、
 会社の備品の雑巾を使って洗うときはさっと水に通して絞って終了、
 人の多い駅のホームなど公共の場所で平気で靴を履き替え、
 ファスナーを全開にして中丸見えの状態の高級ブランドの鞄の一番上に高級ブランドのお財布を人から見えるように入れて
 スリ被害に遭う可能性を示唆しても『大丈夫大丈夫、ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と根拠なく笑い飛ばすような、
 無神経で不潔で先のことを考えない適当でいい加減で傲慢で自分勝手な所作が非常に目につく。


・弱者ぶり、被害者ぶる
 自分に都合の悪いことが起きたり起きそうだったりすると、自分の本性がばれていない人に震えるか細い声で訴えて同情を誘う。


 有休をとるとき『○×さん(年配の女の人)に何か言われそうで怖いから休めない』と言う。
 『何かって何?』と言うと『わからないけど。ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と笑ってごまかす。
 だが、その実、自分が旅行に行きたいと思ったときなどは繁忙期であってもお構いなしに平気で長期休暇を取る。

 1泊2日程の教育出張の際、2日目に何を着たくなるかわからないからという理由で何着もの服を持参し、
 化粧水・シャンプー等も小瓶等に入れ替えるのが嫌だと言って大きな物を持って行っていた。
 会社のみんなにお土産を、と彼女の希望で嵩張る大きな箱の物を買ったはいいが、帰る段階になって
 私の最小限の小さな荷物と自分の巨大な旅行鞄を見比べる。
 何も言わないが、非常に巧妙に、私が嵩張るお土産を全て持って帰って次の日会社まで持って行くよ、
 と言わざるを得ない雰囲気を出していた。
 後で思い返すと、私がそう言い出さなければ、周りから見ると私は極悪非道で意地悪でひどい人間に見えていたに違いない。


・控えめなふりをして実は目立ちたがり屋
 仕事の議論など本来自分が関わらなければならない事柄のときは非常に控えめに発言したり何も言わなかったり
 何かを提案しても結局譲ったり。
 仕事で人に何かを説明するときも、自分ごときが説明するなどおこがましい、といった演出でもって、
 小さく少し媚びた声で控えめに説明する。
 だが、他の人が出張や旅行や遊びの話などをし出すと、急に前に出て大きな声で次から次へと質問したり同意したり相槌を打ったり
 自分や知人の経験を喋ったりと忙しい。


 普段はことあるごとに自分の奥ゆかしさをアピールしているのだが、社内で異動するならどこがいいか、という真面目な問いに対しては
 会社の顔と表現することもできる、彼女の能力では明らかに到底やっていけない、世間から見て最も華やかで精鋭揃いの部署(イメージ)
 を真面目に希望したとか。

 全社的にお昼休憩は事務所の電気を消すことになっているのだが、午後の始業と同時に元々私が電気をつけていたのを見て、
 あるタイミングから彼女が電気をつけに行って自分がみんなのために動いているというアピールをし始めた。
 席替えをして、彼女は電気のスイッチから最も遠い席になり、電気など誰がつけてもいいことなので、もう他の人に譲るかと思えば
 席替え後次の日、わざわざ電気をつけに行った。
 そのときは電気のスイッチに一番近い人が先につけてしまったので、途中で引き返してきたのだが、次の日、
 彼女は午後の始業のチャイムが鳴る前に自分の席を立ってわざわざ電気をつけに行っていた。

 事務所で窓から入ってくる光が強すぎると感じられる日なども誰よりも早く動いてブラインドを下ろしに行く。

 人々に注目され、褒められたりお礼を言われることなどは常に率先して動いている。
 毎週月曜日の始業10分くらい前から始業時まで掃除の時間というものがあるのだが、彼女は始業時間ぎりぎりに出勤して
 慌てて掃除を始め、始業後もしばらく細々とパソコンのディスプレイを拭いたりして丁寧に掃除をしているとアピールをする。

 逆に、目立たない仕事は最初だけ顔を出して率先して加担しているふりをする。
 グループ全員で日を決めて協力して過去の書類を整理して倉庫へ持って行こうという話になったとき、
 当日上の人が整理を始めると即手伝いに行っているのが見えたので、私も自分の業務を慌てて済ませて手伝いに行った。
 事務所の片隅で数人で作業をすること数分、気づくと彼女は自分の席に戻って隣の人と談笑していた。
 業務が忙しいのかと思って何とはなしに見てみると、彼女は何かの書類の端をのんびりとはさみで
 ちょっ・・きん・・・ちょっ・・きん、と切っていた。
 そして、そのまま最後まで書類の整理に加わることはなかった。

 「気づいた人がやる、誰がしてもいい雑用」という類の仕事があるのだが、
 彼女は「気づいて自分からする」ということがないのでずっと何もしておらず、たまたま私がいつも気づいてその雑用をしていた。
 あるとき、他の人が人々の前で『これいつも誰がやってるの?』と聞いたので、私は自分がやっていると答えた。
 しばらくすると、彼女が必要以上に頻繁にその「誰がしてもいい雑用」をするのが目につくようになった。
 事情を知らない誰かが『偉いね、××さん(彼女)がやってるんだ』と褒めると、小声で謙虚そうに
 『はぃ…、見てると誰もしないみたいだったしぃ、別に誰がやってもいいことなのでぇえ、ふしゅしゅしゅしゅっ(笑い声)』と、
 あたかも自分が自分で気づいて以前からずっと自分が率先してその仕事を単独でしているかのような物言いをする。


・仕事を間違えておいて、自分がしたことを人がやったと申告する。
 あるとき、私の担当業務を彼女に引き継ぐことになった。
 すると、送ってはいけない書類を取引先に送ったり、書類を違うところへ送ったり、書類を失くしたり、ということが頻繁に起きた。
 彼女は社内でも華やかな部署は好んで近づいていくのだが、その部署は地味めだったため好みに合わなかったらしく
 日頃からその関係部署の人間に高飛車な態度で接していて折り合いがあまりよくなかったということもあって、
 関係部署から本人ではなく前任者である私のところへクレームがばんばん入ってきた。
 あまりにも毎日のようにクレームがくるので、上に話を上げ、上の人間が彼女から話を聞くことになった。
 彼女は、自分は何もしていない、自分が不在の間(お休みの日・始業時間前・お昼休み中・終業時間後)に誰かが勝手にやったことだと
 上の人間に説明しただけでなく、関係部署の人間にもその旨話していた。
 その後、部内で大規模な異動があり、元々彼女と同じグループだった私は何故かまた同じグループになってしまった。
 異動後のグループにおいても、彼女は書類が見当たらないとか書類を送り間違えたとかいうことをしていたようだが、
 新しく上になった人には、やはり「自分は何もしていない」と説明しているらしい。
 自分と親しい複数の人間には、誰かが勝手にやっていると話し、且つその犯人は私である、という噂を流している様子。
 前のグループで起きたのと同じことが今のグループでもまた起きて、前のグループでも今のグループでも私が同じグループにいるから、
 という非常に短絡的な理由によるものだとかいう話を後日数人から聞いて驚いた。


・学習能力がなく、学習能力がないということを隠してできる人であるふりをするために傍若無人で卑劣なことを平気でする。
 彼女と私とは、入社時期が半年しか違わないのだが、彼女には当然知っていなければならないことであるにも関わらず
 知らないことが多すぎるほどたくさんある。
 元々娯楽と自分の外見のことにしか興味がないので仕事のことを覚える気などまったくなく、
 2年経っても4年経ってもいつまでも初歩的な基本事項を聞く。
 彼女は上の人から『○●(非常に初歩的なこと)しておくように』と言われると『はい、わかりましたぁ』と答えるのだが、
 いつも自分の席に戻った瞬間私にメッセンジャーやメールで「○●ってどうするんだっけー」と質問を飛ばしてきていた。
 何度も何度も教えてあげたことなのにまたか、と思い、回答を返すときに、いつもはどうしているのか、と尋ねると、
 「忘れた(笑)」と返してくる。
 同じ質問を何度も何度も何度も繰り返し聞いてきたが、私は彼女が困っているのであればかわいそうだからと、
 どれほど忙しくても聞かれる度に毎回毎回丁寧に丁寧に時間をかけてわかりやすく文章を書き、返信した。
 丁寧に返信をすると「そうだよねー、そうだろうと思ったんだけど一応確認」などと、実は知っていたのだとアピールする。
 同じことを何度も何度も周りの人にばれないようにこそこそと聞いてくるのでいい加減イライラしていた頃、
 ひょんなことから私以外に後2人同じような目に遭っていることが判明した。
 更に掘り下げて話を聞いてみると、3人とも同じ日の同時刻同じ質問を受けたことがわかった。
 3人に質問すれば誰かは詳しく教えてくれるだろうと3人に同時にメッセンジャーで同じ質問をしていたようだ。


  

・わかっていないのにわかっているふりをする
 質問されたので教えてあげると、あたかもわかっていたが確認しただけ、という風に『やっぱりそうやんなぁ』と言う。
 また、考えられないくらい初歩的な質問をされるので、丁寧に丁寧に説明すると、わかったわかったといった感じで途中で遮る。
 遮られたのでわかったのかと途中で説明をやめて放置すれば間違ったことをしている。
 若しくは、後で人のいないときやメッセンジャー・メールなどで『さっきのなんだけどぉ〜〜』と詳細な説明を求めてくる。


 人から質問されたりすると、唇に指を当てて『ぅ〜〜〜〜〜〜ん』とか『ふぅ〜〜〜〜〜〜ん』とか
 小さく長く声を出して考えるふりをする。
 しびれを切らして答えを促すと『ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と笑ってごまかして話を切り上げる。


・人のことをこき下ろしておいて、しばらく経つと自分も同じことをする
 始業時間後すぐコンビニにジュース等を買いに行ったりお茶を入れに行ったりする人達のことを、彼女はいつも陰で中傷していた。
 そういうことは始業時間になる前に済ませるべきだと。
 しかし、自分は始業時間ぎりぎりに出社し、始業時間後すぐに席を外してお茶を入れに行ったり飲み物を入手しに行き、
 就業時間中しばらく姿を見かけないと思ったらコンビニに行ったりしている。


 夏、人が素足にサンダルという格好で出社しているのを見て『ナマアシってぇ、やっぱり涼しいのぉ?××(自分)は無理やわ〜。
 あ、人がやってるのは全然いいんだけどぉお〜、それにぃ、お母さんに怒られるしー「あなた、何てかっこしてるの!お行儀悪い!」ってぇ。
 ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と端から見ていてもしつこいと思うほど長々とその人を暗にこき下ろしておいて、ほんの数週間後、
 ふと見ると彼女は素足につっかけで当たり前のように社内を歩き回っている。

 会社の給茶機に備え付けの紙コップがあったのだが、紙コップがもったいないので私は自分でタンブラーを持参していた。
 当時はまだマイカップ類を持参していた人は少なく、周りの人が私のタンブラーを見て、自分のコップを持ってきて偉いね、
 毎日持ってきて持って帰って洗うのは面倒でしょう、などと私の行為に好意的な意見を出したところ、彼女は誰も何も聞いていないのに
 『××(自分)はぁ、タンブラーとか無理やねん〜、口をつけてー上を向いて飲むのがぁ、なんかお行儀悪くってぇ、ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)
 それにぃ、紙コップやったら汚れたら捨てれるけどぉぉ、コップとかだったらあ〜汚れても取り替えれないやん〜、それが汚くて嫌。
 ふしゅしゅしゅ(笑い声)、それでもぉお、コップだったらいいけどー、タンブラーはぁ、ちょっとお行儀が悪くて無理ぃ〜。ふしゅしゅしゅ(笑い声)
 あ、人がやってるのはぁ、全然大丈夫なんだけどぉぉお、ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と言う。
 それからしばらくして、環境保護の観点から会社が紙コップ制を廃止し、各自自分のコップを用意することとなった。
 彼女は最初陶器のコップを持ってきて会社に置いていたが、日に日に汚れていくので『茶渋いっぱいついたね、漂白しなきゃ』と言うと、
 『茶渋って何〜?』と聞くのでそんなことも知らないのかと問うと『え〜、だってぇ、いっつもお母さんが綺麗にしてるから知らない〜』と。
 呆れて、漂白すれば取れると教えてあげたのだが『え〜、面倒くさいしもういいや〜、このコップもう捨てよーっと。
 ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と言っていた。
 数日後、彼女はタンブラーを当たり前のように使っていた。
 あれだけ人のことを行儀の悪い人間扱いしておいて自分は当たり前の顔をしてタンブラーを使うのか、と、さすがに少々頭にきて、
 『あれ、タンブラー買ったんだ、お行儀が悪いから使えないんじゃなかったの』と言うと『め〜っちゃかわいくってぇぇ、
 思わず買っちゃったぁああ。ふしゅしゅしゅしゅ(笑い声)、本当はぁ、タンブラーとか好きじゃないんだけどおぉぉぉ、
 これはかわいいから許すぅ、みたいなぁ、きゃはははっ』と。

 会社にはいろいろな人がいて、中にはコスプレ喫茶と勘違いしているような格好をしてくる人がいる。
 彼女はいつもそういう人の陰口を叩き、会社にあんな短いスカートをはいてくる人の気が知れない、
 あの服装は会社にふさわしくない、などと言っていた。
 にも関わらず、気づけば彼女自身がネグリジェかと疑うようなワンピースや乳幼児が着るようなジャンパースカート、
 かがめば中が見えるようなミニスカート、挙句の果てに素足に異常に露出度の高い短パンで海にでも行くのかと思うような格好をしている。

 在席中の人が少ないときにコンビニ等で席を外す人がいると、 彼女はいつもその人のことを無神経だの
 電話対応のことを何も考えていないだの、と陰で文句ばかり言うのだが、 自分は同グループに在席中の人が
 自分以外は私しかおらずその私も電話中、という状態であっても平気で無意味に席を離れる。
 そのままなかなか戻ってこず、私一人でばたばたしているうちに他の人達が戻ってきて、ようやくお手洗いなどに行くと、
 彼女が鏡の前で長々と髪をくるくるいじっていたりすることが多々ある。


・出張であっても遊ぶことしか考えない
 研修に彼女と二人で行かざるを得なくなり、忙しい時期だったが彼女は出張の前日有休を取って会社のお金で一足先に遊びに行き、
 唯一持ってくるように言われた教育用の冊子と筆記用具を忘れたから私に持ってくるように言って、と
 私に直接ではなくと当時彼女が最も親しくしていた人に電話をしてきて私に伝言を残した。


 出張に行くときは、業務の繁忙期であっても土日有休を組み合わせて遊ぶ時間を取って遊びまくり、出張は遊びのついで。
 自由に選択できる教育出張なども、自分の遊びたい場所・遊びたいタイミング(その土地に住む友達の時間が空くなど)
 と合致するものにしか行かない。
 逆に合致すれば、本来の業務の繁忙期であってもお構いなく申し込む。


・お金に興味がないといつも言っているが本当はがめつい?
 彼女はいつも、自分はお金に興味がないとアピールする。
 お金のことにうるさく言うのは卑しい人間である証拠、というようなことをいつも暗にほのめかす。
 だが、出張に行くときなど、いかにして交通費を会社負担で遊ぶかという計画を立てるのに非常な情熱を注ぐ。


 午前半休した日に1時間程残業をしたことがあったらしいのだが、会社のルールで午前半休は当日中に必ず申請しなければならない。
 当日中の申請を怠ると、もはや遡及で午前半休をつけることはできないと就業規則か何かに明記されている。
 彼女はやらねばならないことに極めてルーズなので午前半休の申請を忘れた。
 後日気がついたようなのだが時既に遅く、遅刻扱いにするか、一日有休にするかの選択しか残らなくなった。
 遅刻扱いにするとお給料が減る、かといって、一日有休扱いにすると残業だけつけるわけにいかないので残業代がつかない。
 両方とも嫌だと言って、何時間も何日もかけて関係各所あちこちあちこち散々連絡しまくり、幹部社員までも巻き込んで
 会社のルールに反して無理やり遡及で午前半休をつけさせ、残業代もきっちりつけさせた。
 そして、自分がルーズなのが悪いのを棚に上げて、会社の制度が悪いとか面倒だったとか果てしなく文句を言い散らしていた。

 彼女は当然仕事ができない。
 責任をもって仕事に取り組むなどということもない。
 いつも自分で何も考えず、何かあったらすぐに誰かから答えをもらい、言われた通りに言われたことだけをやる。
 言われた通りに言われたことだけでもできていればまだましな方で、それすらできないため、よくごまかすのに奔走している。
 入社してかなり年数が経っているにも関わらず、聞くこともすることも初心者のまま。
 にも関わらず、何故自分は昇格しないのか、他の誰それさんはあんなに仕事ができないのに昇格した、自分は全然お給料も上がらない、
 この会社はおかしい、などと頻繁に文句を言う。
 どこから情報を仕入れているのか、誰がどの階級にいて如何ほどお給料を貰っているかということを相当詳しく把握しており、
 誰かが昇給や昇格するとすぐに自分の親しくしている人に発表する。
 あまりにもいつもいつも人の昇給や昇格の話を細々と聞かされて気分が悪いので『私別にどうでもいいや、そんなこと』と言うと、
 『うん、私もおぉぉ、(彼女は私に対しては自分のことを名前で呼ばない)別にどうでもいい、ふしゅしゅしゅしゅしゅしゅ(笑)』と言う。
 昇格した人のことを批判して自分が昇格しないのは何故かと嘆くので、私ですら昇格していないのに
 自分が昇格できるとでも思っているのかと呆れて『昇格したいの』と尋ねると『ふしゅしゅしゅ、(笑い声)ううん〜、別にぃぃ』と言う。
 少し意地悪に『ああ、お金欲しいんだ』と露骨に言ってみると、慌てた様子で『ううん、ううん、全っ然そんなんじゃないねん、
 別に昇給とかもどうでもいいんだけどぉおお、×○□さんとかぁ、仕事できないのにぃ、昇格するのはおかしいなぁ〜、と思ってぇぇえ、
 ふしゅしゅしゅしゅしゅ(笑い声)』と笑ってごまかす。


・自分の不注意・怠慢が招いた結果を終息させるのに人を巻き込むことを厭わない
 彼女は最初の頃、いつも椅子の背にストールを掛けて帰ってきた。
 ある日の朝出社したらそのストールがないと大騒ぎをする。
 自分で持って帰ったのを忘れているのでは、とか、どこかにしまったのでは、とかいろいろ言ってみたが絶対にそんなことはない、
 根拠なく誰かが盗んだのだと言い張って課長にも「誰かが自分のストールを盗んだ」と申告した。
 それから間もなく、それまでは終業時間後人がいなくなってから行われていた事務所内の清掃が朝の早い時間、
 人がまばらに出社し始める時間帯に変わっていた。
 恐らく、根拠もないままにストールを盗んだのは清掃の人だと上に言ったのだろう。


 ある日、お手洗いで見覚えのある指輪が置きっぱなしになっているのを見つけ、彼女に尋ねてみるとやっぱり彼女の物だった。
 大事にしている物だからなくなったら大変だと言って大いにお礼を言われたのだが、
 それからも私は2,3回同じ指輪がお手洗いに忘れ去られているのを見つけて教えてあげた。
 同じ部署の他の人が彼女にお手洗いに指輪を忘れていないか聞いているのも見た。
 そしてついにある日その指輪はなくなった。
 彼女はお手洗いに忘れてきたと言っているのだがどこにもなく、周りの人々を巻き込んで大騒ぎをして探し回って
 建物の防災センターや総務も巻き込み、落し物の線及び置き忘れた物を盗まれた線と両方でいつまでも騒ぎ散らしていた。

 またある時、お手洗いのゴミ箱に日傘が引っ掛けられているのが目について仕方のない日があった。
 帰りがけに彼女が傘立てに立てておいたはずの自分の日傘がないと大騒ぎして他の人にも一緒に探してもらっていたので、形状を尋ねると
 私が見た物と一致するので教えてあげたところ、『あーっ!そぉや〜、朝引っ掛けたんやぁ、きゃふきゃふきゃふっ(笑い声)』
 と笑いながら帰って行った。


 

笑うということについて
 笑い声がTPOを弁えず常に異様に大きい
 電車の中、バスの中、社内、どこかの店内、どこにいても周りが驚き迷惑に思うくらい甲高く大きな声で笑う。
 一緒にとても静かなバスに乗っているとき、ちょっとしたことに対してものすごく大きな笑い声を出すので、ぎょっとして周りを見ると
 何人かの人は迷惑そうにこちらを睨んでいて身がすくむ思いをしたことがある。


 自分が答えに困ることを聞かれたり同意を求められたりすると、とりあえず笑ってごまかす
 何があっても絶対に自分が悪者にならないようにするため、誰かが人の悪口や文句を言って『そう思わない?』などと同意を求めると
 きゃははは、ふしゅしゅしゅ、と笑ってごまかす。
 仕事をしているとき、あまりにも初歩的な馬鹿げたことを聞いてくるので『△◎●したらいいんじゃないの?』と言うと
 うふふふ、きゃははは、ふしゅしゅしゅしゅ、と笑ってごまかす。

 人が面白いことを言っているわけでもないのに、条件反射的にとりあえずけたたましく笑う。
 人が仕事の説明をしているときでも、何故か一言喋る度に、ふしゅしゅしゅしゅ!、とけたたましく笑う。
 下手をすると、叱られているときでさえ、ふしゅしゅしゅしゅ!、とけたたましく笑ってごまかそうとする。
 人が一言喋る度に笑って自分は天真爛漫であることをアピールしようとしているのか、
 自分が相手の話を理解していないことをごまかすために笑っているのか、
 自分が叱られたり初歩的なことを説明してもらっているということが周囲の人にばれないようにするために笑っているのか、
 何故いちいち条件反射のようにけたたましく無意味に笑うのかはわからないが、笑うべきところではないところで笑うので、
 うるさくて耳障りでイライラすることが本当に多い。



そして、彼女はとてつもなく巧妙に自分を演出し人を騙すので、時間をかけて掘り下げて彼女を観察しないと彼女がどういう人間かわからない。
彼女は今も周りの人々を欺き続け、か弱く謙虚で清楚でクリーンで天真爛漫で明晰な人間であると信じ込ませることに成功しているようだ。







本当にほんの一部だけだが書き出してみた。
だが、やっぱりよくわからない。
もう関わらないようにしている彼女の何がこれほどまでに私を苛立たせるのか。
こちらが非常に一生懸命誠意を以って接してきたにも関わらず、彼女が私に対して非道徳的ことをしたからだろうか。
自分があまりにも長い間必死で我慢しすぎて、一気に噴火したイライラがまだおさまらないのだろうか。
第一印象で判断するという自分のやり方がやはり正しかったということがわかって無駄な時間を過ごしてきたことを悔やんでいるのだろうか。
人を知りすぎるという行為がいけなかったのだろうか。
そもそも、自分が列挙したことは人一人嫌うに価することなのだろうかと思って読み返してもみた。
が、他の人がどう思うかはわからないが、私はやはりこういう人間は大嫌いだ。
この際、焼けぼっくいでもお見合いでも噂でちらほら聞く不倫でも新規恋愛でも何でもいいから寿退社してもらいたいと切に望む。
官邸でもハリウッドでもホワイトハウスでも宇宙でも、最後であれば自慢話も快く聞いてあげるから、どこへでも行ってもらいたい。
そして、まともな人間に迷惑がかかるので、できれば二度と勤めに出るということをしないでほしい。





と、ここまで書いてものすごく嫌なことに思い当たってしまった。
私はもしかすると彼女の、自分の本性を隠してうまく世の中を渡っていく、というある種の能力を羨んでいるのではないだろうか。
そうは思いたくないが、自己分析をすると情けないことに結局そういうことなのではないだろうか。
彼女の性格・特徴・言動を一つ一つ検証してみても、私はどこを取っても絶対に彼女のような人間になりたいとは思わない。
もし自分が本当に彼女を羨んでいるとすれば、多分、自分の本性を隠し通して世の中をうまく渡っていく、という部分に関してのみだと思う。
そして、もしかして羨むだけに留まらず妬んでいるのか?
だとすれば、私は何て嫌な人間なのだろう。
自分自身が常に本性をぶちまけて世渡りに失敗してばかりいるから人を羨み妬むのだろうか。
自分がそういう情けない人間だということがわかって少なからずショックを受けたが、少しすっきりした。
かもしれない。






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