日本人にとっての自転車とは

昨年6月にクロスバイクを購入した。
10月に夫がロードバイクを購入し、それに引きずられるように12月に私もロードバイクを購入することとなった。
夫がロードバイクを購入してから約1年、私も後2ヶ月ほどで1年が経とうとしている。
思い返せば、二人ともロードバイクを購入してから随分走った。
毎週毎週毎週毎週、風のない日も強い日も弱い日も、身を切るように寒い日も体が溶けそうに暑い日も。
雨の日以外は本当にほとんど毎週末自転車に乗っている。
近頃はレインウェアを購入して雨の日までも走るようになった。
走る距離は、今年に入ってから飛躍的に伸びた。
1日で150km走れば、まぁ走ったな、という感じ。
100kmだと、ちょっと物足りないかな、という感じ。
ブルベという、200km、300km、400km、600kmをそれぞれ制限時間内に走るイベントの200km、300kmにも参加した。
400km以降は夫の仕事の都合で参加できずだったが。
8時間耐久レースというもので、生まれて始めて鈴鹿サーキットを自転車で走った。
8時間で走った距離は200km以上。
どうやら、いつの間にやらすっかり自転車の虜になってしまったらしい。

私は平坦な道が好きなのだが夫は上り坂が好きらしく、毎週末山へ行っている。
いわゆる、ヒルクライム、というやつだ。
そして、私はいつも山を上り始めると、あっという間に置いていかれる。
自転車に乗り始めてからしばらくは、運動をほとんどしてこなかった夫と体を鍛え抜いて生きてきた私とで
ちょうどいい具合に釣り合いが取れていたように思う。
しかし、当然といえば当然のことなのだが、本来男と女とでは筋肉量が全然違う。
従って、同じように鍛えれば当たり前のことだが男の方が強くなる。
その、どうしてもどうしようもないあまりにも悲しく悔しくもどうしようもない事実を、私は未だにどうしても気持ちよく受け入れることができない。
山を上り始めてすぐにペースダウンする自分に対して、水を得た魚のようにぐいぐい上っていく夫に置いていかれる度に、
えもいわれぬ不快さと妬ましさと悔しさと劣等感が襲ってくる。
が、しかし、私を気遣ってゆっくり一緒に上ってくれる夫を見ると、それはそれでとてつもない申し訳なさとある種の苛立ちに支配される。
そういう葛藤の中で、私は毎週末苦手な上り坂を哲学者になりながらゆっくりゆっくり息も絶え絶えに時間をかけて上るのだ。

だからといって、私が山が嫌いだなどとは思わないでいただきたい。
私は山が好きだ。
山は夏は涼しく、上れば必ず下りがある。
ブレーキを握りすぎて腕や手の指を攣りそうになるくらい急な下りは下っていても楽しくないが、
なだらかで緩いカーブの綺麗に舗装された広い下り坂であれば少し足を回せば時速60km以上は余裕で出る。
冬の下りは凍えるが、夏の下りほど爽快なものはない。
そして何より、街中と比較すると車の交通量が圧倒的に少なく、同時に街中であれば縦横無尽傍若無人に走り回る
危険極まりない普通の自転車が走っていないのだ。

俗にいう「ママチャリ」
私はその呼称が嫌いなので絶対にそう呼ぶことはない。
語源がよくわからないし品がない。
自転車を「チャリ」と称するのも、私には理解し難い。
私は派遣社員時代は毎日片道5〜6kmの道程を6段変速の自転車で通勤していた。
正社員になってからは会社が自転車通勤を禁止しているのでできなくなったが。
私が通勤用に使っていた6段変速の自転車はロードやクロスなどではなく、
安定性を重視した造りの重たいサドルの低いハンドルの高い普通の自転車である。
それで街中を走ると、車のマナーの悪さも自転車のマナーの悪さも歩行者のマナーの悪さも
ストレスの塊が脳に腫瘍を作るのではないかと思うくらい目についた。
しかし、それはまた追々機会があれば書くことにする。
高いロードバイクに乗って走行距離を伸ばし、山を走り回り、平地を時速35kmで走れるようになってから
私はいろいろなことを考えるようになった。
中でも頻繁に頭の中に去来するのが、日本人にとって自転車とは何なのだろう、ということだ。
うまく説明できないが、日本人にとって自転車とは何なのだろう。
放置自転車を見る度に考える。
信号無視をする自転車を見る度に考える。
ふらふら蛇行運転をする自転車を見る度に考える。
自宅から駅までのほんの1km程度の距離を息を切らせて自転車で走る人を見る度に考える。
道路交通法について考える度に考える。
携帯をいじりながら自転車に乗る人を見る度に考える。
夜、無灯火の人を見る度に考える。
右側の歩道をベルを鳴らしながら暴走する自転車を見る度に考える。
車道の左端を走って車にクラクションを鳴らされて怯えて更に左ぎりぎりに寄って車に道を譲る自転車を見る度に考える。
その他、いろいろな局面で、日本人にとって自転車とは何なのだろうかと考えてしまう。
いろいろな意味で、日本人にとって自転車とは何なのだろうか、と考える。

私にとっての自転車は、車種が何であれ、常に大切な足であり楽しいおもちゃであり危険を孕んだ乗り物だ。
それは幼い頃に生まれて始めて兄のお下がりの自転車に乗ったときから変わっていない。
これまでの人生で一度も、自転車に乗っていてルール違反をしたことはない、と言い切ることはできないが、
大抵の場合、道路交通法に則った乗り方をしてきた。
楽しく長距離を走れるロードバイクに乗るようになり、自転車という乗り物を今まで以上にこよなく愛するようになってから、
今まで以上に法令や危険性やマナーやルールを意識するようになった。
ロードバイクに乗るようになってから、たまたま海外でロードバイクに乗るチャンスに恵まれた。
そこで100kmほど走ってみて、今まで漠然と頭の中を浮遊していた疑問がはっきりとした形を持つようになったのだと思う。
日本人にとって、自転車とは、何ですか?






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