お金の亡者

 結婚することに決めた。
親の都合もあって性急に準備を進めている。
こんな私が結婚なんて、といささか感慨に耽る。

 さて、本人は結婚式やら披露宴やら儀礼的で無駄に華々しいことが嫌いなので、できれば避けたい。
だが、親が絡む以上そうもいかず、結局式だけは親族のみを集めた小規模のものながら、きちんと行うことにした。
個人的に和装は好きになれないので、いわゆるウェディングドレススタイルで進めることになった。
準備を進めるうちに驚愕の事実が次々と浮上してくる。
ウェディングドレス1着ほんの数時間着るだけなのに何の変哲もないドレスが当たり前のように30〜40万もする。
何にそれだけのお金がかかっているのか非常に気になるところだ。
ほぼ同じような物で10万近く値段が違う物があったので、違いは、と尋ねると、胸の刺繍だと言う。
胸の刺繍といっても、ほんの直径10cm程度のものだ。
まことに恐れ入る。
かといって、自分で持ち込むとなるとそれはそれで十数万のお金を取られる。
何故、持ち込み料というものがかかるのか不思議だ。
他にも引き出物一つ持ち込むのに数千円かかったり、それはそれはひどいことこの上ない。
何やらの控え室1室借りるのに数万円かかるのだが、それはあくまで部屋代に過ぎないのだ。
控え室なので汚すようなこともせず、使うのもほんの数分長くて数時間なのだろうが、数万円。
私などは式に夢も希望も持っているわけではないので、一般の人々と比べると
随分いろいろと簡素化しているはずなのに、本当に必要なのか?と問いたくなるようなお金がどんどん出ていく。
準備を進めるうちにだんだん嫌になってきた。
何度か呼び出されて、こちらはどうでもいいのに髪形はどうするかとかブーケはどうするかとか
真剣に悩むことを強要される。
別に真剣に悩めと言われるわけではないが、どうするかと聞かれて、特に希望もないから適当に、とか
一番オーソドックスにおかしくない程度のものを、とか言うと呆れた顔をされる。
無言の圧迫である。
世にいうマリッジブルーというものはこういうことの積み重ねで生じる現象なのではないだろうか。
何事も経験だと思って、親の面子も慮って式くらいは真面目に挙げようと思ったが、
これではマリッジブルーにもなるというものだ。

 私は、ドレスがどんなものでも式がどんなものでも髪型がどんなものであってもブーケがどんなものであっても
はっきりいってそんなことに執着はない。
それよりも、わざわざ集まってくれる人が不愉快な思いをしないように、
わざわざ来てくれる人がそれなりに楽しんでくれるように心がけたいと思っている。
来てくれる人にとって、花嫁のドレスがいかに凝ったものか髪型がどれほど美しいものか
そんなことは関係ないと思う。
だから、最低限親が恥をかかない程度のものにするつもりでいる。
そういう意気込みでいるために、招待状も自分で作った。
式場で作ってもらうこともできるらしいが、親族はほとんどが年配の人なので、
1通何百円もかかる味気ないプリントされた招待状をもらうより直筆の手紙の方が楽しいに違いないと思うからだ。

 私は大体何でもシンプルが好きなので、自分が余分だと思うものは徹底的に排除していっているつもりだ。
それでも、万単位でお金が出ていく。
結婚式というものは、よほど経済的に裕福な階級の人間にのみ許された特権なのだろうか。
ブライダル業界の裏側を覗いてみたくなる。
不当にお金を巻き上げているわけではないのだろうが、我々消費者から入ってくる多額のお金が
一体どこに消えているのか非常に興味深いところだ。






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