皮膚科も多種多様

 今年の5月に初めて行った総合病院の中の皮膚科へしばらく通ったが、
顎のニキビはひどくなるばかりだった。
そこで、人に教えてもらった皮膚科の病院へ行ってみることにした。
その皮膚科のお医者さんは少し年配の女の人で、とても面白い。
言うべきことをちゃきちゃきと話す。
こちらが口を挟む隙もなく、次から次へとよく喋る。
最初は少し圧倒されてしまったが、一通りお医者さんの話を聞き、話が途切れたところで
『ときに、教えて戴きたいことがあるのですが』と切り出すと、身構えてから話を聞いてくれた。
質問さえさせてもらえれば、非常に無駄のない回答が返ってくる。
私はそれが好きだ。

 最初行ったとき、以前総合病院の皮膚科で塗り薬を処方してもらったが全然効かなかった、
という話をしたところ、きっぱりと
『こんなことを言うのは申し訳ないんだけれども、はっきり言って、
あなたほど症状のひどい人が塗り薬だけで治そうとしても無理ですよ』と言われた。
そうして、飲み薬として抗生物質と塗り薬を出してもらった。
そのとき出してもらった飲み薬が、めまいの副作用を訴える人が比較的多い種類のものだったようで、
『一応、朝晩食後に飲んでください。但し、飲む量は自分で適宜調整してね、
電車を待っていてホームから落ちちゃっても困るので』と言われた。
1週間後、再度病院を訪れた私にめまいはなかったか、と尋ねるので、めまいはないと答えた。
『まぁ〜あっ、そう?それはよかったわ。めまいのない人は珍しい。
きっと薬が合ってるのね、よかったよかった』とご満悦だった。
が、話がおさまったところで私が別の副作用の症状を告げると、彼女は頭ごと目をぐりん、と回した。
『ああ……、あなたはそっちですか。そうですか。こちらを立てればあちらが立たず…』
落胆するときは、本当に心の底から落胆した表情を見せる。
その皮膚科は予約ができないのだが、一度予約はできないのですよね?と念を押したところ
『ごめんなさいねっ!今日は馬鹿みたいに混んでますけど、今週なんかは月曜とか火曜とか
それはそれは人が少なかったのよ、どうして皆さん月曜とか火曜に来ないのかしらね、
まぁそれは患者さんの自由ですけどね』と少し愚痴をこぼされた。
何を言うにもあまりにも正直なので私はいつも笑いっぱなしだ。
抗生物質を飲み続けるのもどうかということで、あるとき漢方薬に切り替える話をされた。
私が、漢方薬は飲めないことはないと思うが顔がひん曲がるので会社では少し飲みにくいと抵抗を示すと
『なるほど。顔が歪むのね、あなたは正直な人なんですね、なるほどなるほど』と一人何か納得していらっしゃった。
あるとき、私がビタミン剤も飲んだ方がいいのかどうか尋ねると
『ビタミン剤ね、はい、ビタミン剤出しますよ。あなたが1日3回も飲むの大変だろうと思ったから出さなかっただけで。
あなたが飲みたいのなら出しますよっ』と言われた。
おかしくておかしくて、飲みたいと思って飲む人などいないと思う、と笑いながら言ってしまった。
いちいち動作が大きく、反応が大きく、単刀直入で言いたいことを言ってくれるので
私は時として最初から最後まで笑いっぱなしで過ごすことがある。
そうすると『おかしいですか、何がおかしいですか。あら、あなたこの前も笑ってた人ね。
ごめんなさい、はい、じゃぁまた来週』と言って診察室を追い出される。
変なお医者さんだなぁ、と思いながら通院している。

 抗生物質が効いて顎のニキビはだいぶよくなったのだが、どうしても消え去らない。
前回は、硫黄の匂いのするローションとやらを使ってみましょうかと言われた。
私が、それは前に行った総合病院の皮膚科で出してもらって悪化したものだ、と言うと
『ああぁ…、そうでしたね、ごめんなさい。あなたは本当に難しい人ですね』と言われた。
ならば石鹸を変えてみましょうとサンプルを3種類出してくれた。
今サンプルを次々と使いながら、これだけ何も変化がないと、次回病院へ行っても
報告すべきことは何もなさそうだ、と思う日々。
彼女が見せる反応が楽しみだ。
ニキビが全部消え去ったとき、もうあの病院へ行くこともなくなるのかと思うとほんの少しだけ残念な気がする。






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