縮毛矯正ｖｓデジタルパーマ

　私の髪はクセが恐ろしくきつい。
特に前髪が強力なクセをもっている。
雨が降れば膨張するというよりもクセが全面に出ておでこに前髪が張り付き、薄気味悪い人のようになる。
あまりにも汚らしく見るに耐えず触るのも気持ち悪いので、ここ１０年程は
４〜６ヶ月に一度縮毛矯正をするようにしている。
その昔、ストレートパーマをかけたところ、半日ほどでクセが戻ってきたのでやめた。
縮毛矯正をするために美容院へ行くと、どの美容院でもクセの立派さを指摘される。
湿度の低い日はそれほどうねるわけではないのだが、
それでも前髪は生え際がひどいのでわかるらしい。
どこでも『しっかりしたクセですねぇ、生えグセが特にひどい』と言われる。
縮毛矯正は過程の中頃にアイロンで髪を挟んで伸ばすという作業があるのだが、
前髪だけはアイロンで髪を抑え込もうとしても生え際のクセが反発してなかなか下りない。
挙句の果てに生えグセが反発して前髪が角のように立つ。
それでも縮毛矯正は私にとっては救いだ。
縮毛矯正をしては伸ばし縮毛矯正をしては切る、を繰り返してきた。
私は朝も晩も髪に時間をかけるのが好きではない。
晩は髪を洗ってわさわさと拭いてドライヤーで吹き飛ばして乾かし、
朝はブラシでしゃかしゃかと梳かして終わり。
邪魔なときはざくっと後ろでまとめて結うくらいだ。
髪が伸びれば自分で切るし、髪型にこだわりもない。
私は何も流行のおしゃれな整った髪型がしたいわけではない。
ただ、清潔感のある普通の状態を保ちたいだけなのだ。
自然な髪を手に入れるためだけに高いお金を出して縮毛矯正をする。
私ほど無駄に髪にお金をかけている人は少ないのではないかと思うことがある。

　日本は湿度が高いので、私のような髪の持ち主にとっては不向きだ。
間もなく梅雨に入るので、先日約半年ぶりに美容院へ行ってきた。
目当てはもちろん縮毛矯正で、ついでに今回は短く切ることにした。
お店に入って基本事項を書かされ「本日の目的」を聞かれたので
私ははっきりと、縮毛矯正をして短く切ってほしい、と言った。
私は基本的に同じ美容院へ二度以上通うということをしない。
どの美容院へ行っても満足しないので毎回違う美容院を探す。
ほとんど毎回違う美容院へ行くので先方も初めてのお客さんということで気を遣ってか
作業中に美容師さんがいろいろと話し掛けてくれる。
私はそれが嫌いだ。
元々知らない人との無意味な会話が嫌いで大声で喋るのも嫌いな性格である上に、ドライヤーの音で何も聞こえない。
それで、悪いとは思うがいつも何も聞こえないながら曖昧に笑って適当に相槌を打つことにしている。
その日も適当に「はぁ」とか「はい」とか「そうですね」とか相槌を打ちながらまな板の鯉になっていると、
縮毛矯正の過程の中で、髪の下の方にロットを当ててあっという間に髪を巻かれた。
ロットの先に心電図を図るときのような線を繋がれて熱くなった。
何が起きているのかわからず呆然としていたが、我に返って何をしているのか尋ねると
これがデジタルパーマというものだ、と言う。
どうやら適当に話に相槌を打っている最中に縮毛矯正＋散髪コースから縮毛矯正＋デジタルパーマコース
への変更に同意してしまっていたようだ。
言われてみれば、デジタルパーマがどうのこうのという話を少しした記憶があった。

　私は髪をまっすぐにすることに興味はあってもわざわざ人為的にくるくるにすることには興味がないので
生まれてこの方パーマというものをかけたことがない。
知識は役に立つので必要だが実践は必要ない。
それなのに、予定外にデジタルパーマをかけてしまった。
人の話をろくに聞かずに返事をしていた自分も悪いのだが、とにかく気持ち悪い。
裾の方だけとはいえ、私の顔も服装も愛らしい髪型には非対応であるため、
髪型だけが浮いていて不愉快だ。
そこで、髪を乾かす際に一生懸命伸ばしながら乾かしてみた。
しかし、さすがはデジタルパーマ。
原理は縮毛矯正と同じというだけあって、なかなか衰えを見せなかった。
最近ようやく随分伸びてきたが、まだぐねぐねしている。
それに何よりも、デジタルパーマをかけた辺りがざらざらしていて手触りが悪い。
私は半年に一度程度縮毛矯正をかけるだけで、他に加工せず着色もしなければ脱色もしないためか、
縮毛矯正で髪をまっすぐにした後はとてもなめらかで綺麗だ。
クセさえなければとても質のいい髪だと自分でも思う。
それがバサバサになり、触って気持ちのいいものではない。
私は猛烈に後悔した。
当分の間反省も込めて我慢するが、時がきたら全面的に縮毛矯正をかけて、
次からは少しでも聞き取れない話には一切応じないようにしようと思う。
どのような薬剤を使おうが、パーマはもう結構。
私に必要なのはまっすぐで自然な髪だ。

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