叱られる夢

 近頃よく子供の頃の夢をみる。
子供の頃の私はいろいろな理由でしょっ中叱られていた。

 私は長期休暇中に出される宿題を休暇が始まってから1週間以内に片付ける子供だった。
1校のアメリカンスクールと2校の日本語学校、計3校の学校に通っており、
それぞれの日本語学校から長期休暇の宿題が出されたが、私は意地でも1週間以内に片付けていた。
嫌なことを終わらせない限り気になって気になって仕方がなくて
いつまでも思い悩む性格なので一刻も早く終わらせなければ落ち着かなかった。
肩の荷さえ下ろせば、後は楽しい長期休暇を過ごすことができると信じていた。
しかし、親は私が宿題を終えた時点で独自の課題を与えた。
嫌で嫌で仕方がなかったが親に対抗できるはずもなく、毎年非常な苦痛を感じながら親の出す課題をこなした。
小学校低学年のある夏休み、課題として漢字の練習というものが出された。
父がわざわざ日本から取り寄せた、漢字を書く為の四角いマスで区切られた新品のノートが数冊渡された。
課題の内容は「毎日漢字1字につき1行ずつ使い、それを1日見開き2ページずつ練習すること、
練習する漢字は問わない、今までに習ったものでも構わないし、
まだ習っていないものを辞書で調べるなどしてもよい。同じ漢字を何度も練習するもよし」
というものだった。
そもそも小学校低学年でそれほどたくさんの漢字を知っているはずがないと思うのだが、
私の読書量は半端ではなく漢字も好きで材料には事欠かなかったので、課題自体にあまり苦痛は感じなかった。
しかし、1週間もすると、1つの漢字を9回も10回も書くことを2ページ分繰り返さなければならず、
しかもその作業を毎日しなければならない、ということに飽きた。
親がチェックするわけでもなさそうだということに勇気を得て、
私は毎日漢数字の「一」を書くことにした。
来る日も来る日も私は机に向かって漢数字の「一」を書き続けた。
今思えば馬鹿なことをしたものだが、当時は親のルールに何一つ違反しているわけではなかったので
罪悪感は全く感じなかった。
唯一の罪悪感といえば、ノートがもったいないかな、ということだけだった。
やがて、夏休みが終わりに近づき、親から漢字の練習ノートの提示を求められた。
罪悪感のかけらもなかったので素直にノートを提出し、こっぴどく叱られた。
母は部屋の入り口付近で笑いを噛み殺していたように記憶しているが父は激怒し、
私はその後数時間正座をさせられてお説教をされた。

 そのときの夢をみる。
いつもこっぴどく叱られて延々とお説教をされている最中に目が覚める。
どんどん克明になっていくようだ。
夢の中で親に自分の尊大さを咎められているような気がして気分が悪い。
そして、それはもちろん、自分にやましいところがあるからだ。






back
back to TOP世渡り下手の物語







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送