親孝行は楽じゃない

 以前から母がぐずっていたので、両親を伴ってUSJへ行ってきた。
両親共に初USJである。
いつの間にやらお誕生月割引なる制度ができていて、ちょうど母のお誕生月だったので利用してみた。
原始的にUSJのHPからクーポンをプリントアウトして当日窓口に持って行って割引チケットを買うことにした。
お誕生月割引大いに結構。
ただ、しばらく行かないうちに入場料が値上がりしていて驚いた。
確か前は大人一人\5,500だったと思うのだが、今は一人\5,800もする。
USJは儲け主義とは聞いていたが、なるほど…、という感じだ。
おまけに駐車場代まで前は1日\2,000だったのが1日\2,200に値上がりしていた。
やめてほしい…。

 さて、散々行きたがっていたくせに当日入場料の高さに目を丸くする母を後目に私はさっさと窓口に並び、
クーポンを出して大人3枚分のチケットを所望した。
以前からUSJではEDYが使えるようになったとは聞いていたが、チケットもEDYで買えると知らなかった。
EDYというのは電子マネーのうちの一つである。
私はEDYのカードを所有していて、使える場所ではできるだけ使うことにしている。
だから、USJの窓口に小さくEDYでチケットが買えると書いてあるのを見逃さなかった。
『チケット、EDYでもいいですか』と尋ねると『はい』と言うのでEDYのカードを準備した。
しかし、チケットをEDYで買えるということを調査しきれていなかったためにEDYにお金を補充しておらず、
3人分のチケットを買うだけの残金がなかった。
従って、カードを機械に乗せて残金が足りなかったことが判明した時点で、
『EDYで足りない分は現金でお願いします』と言った。
しかし、不足分を現金で差し出すと、窓口のおねーさんはおろおろしている。
『えーと、3人分ですので後○円…』とおかしなことを言うので
『いや、だからEDYで足りない分は現金でお願いしますと言ったんですけど』と言うと
『あ、そうですか』と言ってもう一度カードを機械に乗せるように促された。
カードを機械に乗せて機械がカードを読み取ると、通常は機械が「シャリーーン」という音を発する。
一度目も二度目も音が聞こえなかったのだが、周りがうるさいせいだと思っていた。
二度目にカードを機械に乗せて、窓口のおねーさんが『はい、結構です』と言い、
EDYで足りない分を現金で払い、お釣りをもらって、後はチケットを渡してもらうだけとなった。
なのに、何をぐずぐずしているのかチケットをなかなか渡してくれない。
中でうろうろしながら『少々お待ちください』と言うだけだ。
せっかちな父はチケットも持たずに入場口まで行っては戻ってきて『何をしているんだ』とイライラしていた。
随分待たされた後、年配の女の人がチケットブースに入ってきたのが見えた。
その人は窓口のおねーさんから何やら話を聞き、窓口へやってきた。
『EDYをもう一度お願いします』と言うので三度目カードを取り出して機械に乗せた。
機械が大きな音で「シャリーーーン」と鳴り、機械が私のEDYを読み取ったことが確認できた。
大方、窓口のおねーさんがEDYを読み取る機械の電源を入れ忘れていたか何かだったのだろう。
我が両親は非常に張り切っていたので10時開園のところを9:30に着いてチケットを買うのに並び、
9:45頃に『大人3枚お願いします』と言葉を発したというのにチケットが手に入った頃には10:00を回っていた。
父はゲートが開いてもまだチケットが入手できていないことに腹を立て、非常にイライラしていた。
両親共にとても楽しみにしていただけに、せっかくの二人の初USJがそんな始まり方をしたことに、
今回のUSJ訪問の主催者である私は何となく面目丸潰れという気がした。

 すっかり不機嫌になってしまった父をなだめながらゲートの前まで行くと、そこには修学旅行生の人だかりがあった。
一人ずつ律儀にエントランスの改札を通らせているために団体客が消化されずにまったく前に進まないのだ。
母はそれを見て次第に不機嫌になり始めた。
団体客は団体用入り口から入れればいいのよ。
ご尤もです。でも私に言われても困ります。
おまけに、改札口にはスタッフが一人若しくは二人ずつ立っているにも関わらず、
ただ立っているだけで案内図等を渡してくれるわけでもなく、
案内図等は改札を通ったところに勝手に取れと言わんばかりに置いてあり、
しかも補充されていないものもありいろいろな案内が混ざって置いてあるものありでわかりにくかった。
そのせいで、案内図が置いてあるところに人が溜まり、後ろがつかえて改札の流れが更に悪くなっていた。
初っ端からUSJの不手際によって次々と味わわされる不快さに、我が両親は憚ることなく文句を言っていた。

 以前はいくつかのアトラクションでEXPRESSチケットというものがあり、早い者勝ちで無料で配布していた。
EXPRESSチケットを手に入れた者は指定された時間にそのアトラクションへ行けば並ばずに入れる、というものだった。
一度に1アトラクションずつしか手に入れることはできなかったが、なかなか有意義な制度だったと思う。
それがなくなっていた。
代わりに、同じEXPRESSチケットと称して余計にお金を払う人間を先に行かせてやるという趣旨のチケットが販売されていた。
本当にがめついなぁ、とただただ呆れるばかりだった。
そして、結構値の張るそのEXPRESSチケットをざくざく使っている修学旅行生を見て
私達は『最近の子供は裕福だねぇ…』とため息をつくばかりだった。
USJはペットボトル等の持込を禁止していて、中で飲み物等を買わねばならないのだが、それがまた高い。
自動販売機で普通の500mlのペットボトルのお茶を250円で販売している。
父は自動販売機の値段を確かめに行き『高いものなんだなぁ』と、何やら感心していた。
持込を禁止しておいて法外の値段で売るとは何とふとどきな、という旨のことを母は愚痴っていたが
周りの修学旅行生達が躊躇することなく馬鹿高いペットボトルを買っているのを見て
私達はまた『最近の子供は裕福だねぇ…』とため息をついた。

 アトラクションは文句なしに楽しい。
私の知らないアトラクションもできており、我々は大いに楽しんだ。
父はジェットコースターの類の乗り物が少し苦手なので、ジュラシックパークライドに乗るときは『怖くないよ』と騙して乗せた。
騙された父は降りてから『ああ怖かった怖かった』を連発していたがそれほど怖かったような顔をしていなかったので放っておいた。
彼らは各アトラクションで律儀に感心したり批評したりして楽しんでいた。
スパイダーマンの待ち時間中などは父はわざわざ老眼鏡を取り出して壁に掛かっている新聞を片っ端から読み、
新聞の印刷工場を再現していると思われる建物の、誰も目に留めないような細部まで観察しては感心したり意見を述べたりしていた。
いろいろなアトラクションを回しているスタッフの動きを見ては、あんなやり方ではどうしようもない、とか、
効率が悪すぎる、とか、教育がなっていない、とかいちいち大きな声で文句を言うので辟易したが、
道を歩いているときに大きなゴミ箱を引きずった若い青年が突然だらだらと我々の真ん前を横切って
私は躓きそうになり、さすがに私も文句を述べた。
USJは何かと東京ディズニーランドと比較されるが、ディズニーランドでは到底考えられないようなことを
あまりにも平気でするためにますます質の悪さが露呈するのだ。
USJの質の悪さはともかくとして、一応両親の反応を見ながら疲れすぎないように反芻するする時間もとってあげたかったのだが、
待ち時間のことも考慮に入れると、ある意味時間との闘いでもあるので、私は両親を急き立てるようにして次から次へと進んだ。
アトラクションの待ち時間を調べてあっちへ行ってこっちへ行きまたそっちに戻って、という具合にくるくる歩き回った。
途中で両親がギフトショップで足を止めたそうな様子も見られたが、
お土産屋さんというものはその日の最後に行くものなのだと説得してさっさと次へ進んだ。
私は極度の方向音痴であるので案内人としては最も不適格なのだが、何かと屁理屈をこねて道案内に努めた。
おそらく両親はその日一日忙しく歩き回ることに疲れただろうと思うのだが、
私は道案内をすることにすっかり疲れ切ってしまった。
何度もUSJを訪れている私なのに、何故未だに方向も道もアトラクションの位置関係もわからないのだろう。
情けない話だが、私にとっては道案内をすることほど苦痛なことは滅多にないのだ。

 密かに迷子になりながらも一生懸命歩き回ったおかげか、主要なアトラクションはほとんど制覇することができた。
母は19:30から始まるネバーランドのショーだか何だかを見たがっていたが、
家では犬に留守番をさせており、ショーを見てからでは帰るのが遅くなるということで諦めてもらった。
帰る前にお土産屋さんに入って社会見学をしていると、母がスヌーピーの小さい携帯ストラップに執着を示したので買ってあげた。
そして、それ以上欲しい物が見当たらないうちにさっさとUSJを後にした。

 後日、両親と共に夕食のお買い物にスーパーに出かけた。
母も私も父を連れてスーパーに行くのは好きではない。
すぐに一人でふらふらとどこかへ行き、戻ってきたときにはやたらと高くて身のない食材を手にしていたり、
レジに並んでお金を払う寸前になって不必要な物を持ってきて買うと主張したりするからだ。
その日もまたどこかへ行き、何度か不要な食材を持ってきては母に返しに行かされていた。
レジに並び始めたとき、父は懲りずにどこかへ去って行った。
今度は何を持ってくるかな、と母と話をしながら順番が回ってきた頃父が戻ってきた。
その手には500mlのペットボトルのお茶が握られており、大きな声で
『おい、おい、USJで250円で売ってたお茶な、ここで99円で売ってるぞ』と叫ぶので恥ずかしくて仕方がなかった。
母から小声で、そんなことはわかっているから早く返してくるようにと諌められて返しに行った。
世間知らずな夫を持つ妻は苦労をし、世間知らずな父親を持つ子供は恥ずかしい。






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