被害妄想?

 先日、私にしては珍しく電車に駆け込み乗車に近いことをしてしまった。
私は電車に乗るときは普段あまり一番端の車両に乗ることはない。
大体、自分が降りる駅が端っこの車両でない方が都合がいい場合が多いからだ。
だが、その日は電車が発車する1分ほど前にホームに着き、そのまま一番近い車両に乗ったところ、
たまたまそれが一番後ろの車両だった、というわけだ。
私としては自分が降りる駅がどちらかというと前に近い方が都合がよかったため、
車両を移動したかったのだがまばらながら立っている人がいたので邪魔にならないように
一番後ろの車両に乗ったまま移動することにして、いつもの癖で携帯電話を取り出してメールを始めた。

 その電鉄会社では、一番前の車両と一番後ろの車両での携帯電話の使用を禁止しており、
一区間か二区間に何度か放送も流れる。
私は普段一番前の車両にも一番後ろの車両にも乗ることがないため、あまり意識していなかった。
その日は自分が乗っている車両が携帯電話禁止車両であることをすっかり忘れてメールをしてしまっていた。

 電車は動き始め、私がメールを打ち始めてほんの1分か2分ほど経った頃、突然耳元で大きな声で叱られた。
『ここは携帯電話禁止車両です!!!』
キンキンと甲高く大きな声に驚いて横を見ると、車掌さんが私に向かって怒っていた。
怒られて初めて、そういえばここは携帯電話禁止車両だったっけ、と思い出した。
しまった、と思って『すみません』と小さくなって謝りながら携帯をボケットにしまうと、
車掌さんは私を睨みつけてから自分の部屋に戻って行った。
車内はそれほど混んでいたわけでもなかったが、それ故にほとんどの人が私の方をちらちら見て
様子を窺っているのがとてもよくわかり、私は穴があったら入りたい気持ちだった。

 恥かしくはあったが、私が恥かしくて下を向いているから逆に好奇の目に晒されるのだ、
私が顔を上げて他の人と目が合えば、皆は自分から目を逸らすに違いない。
そう思った私は意を決してぐるっと周りを見回してみた。
やはりこちらをじろじろ見ていた人々は私と目が合った途端に目を逸らした。
やっぱりな、と思いながら更に周りを見回すと、他にもいるではないか、携帯でメールをしている人が。
ガムをくちゃくちゃ噛みながら優先座席にぐで〜っとだらしなく腰掛けて
この上なく目立つ格好で長い爪でカチカチとメールを打っている明らかに頭の悪そうな若い女の子。
他にも座って延々とメールを打っている男の人が何人も。
何故、私だけが注意の対象に???
立ってメールをしていたから目立ったのだろうか。
だが、立って目立っているからという理由で一人だけ注意されるのはおかしい。
それほど広大な車内でもあるまいし、私のところまで来た時点で他の携帯利用者も目に入ったはずだ。
しかも、その一人は自分よりも年配の人が近くに立っているにも関わらず優先座席を占領している。
なのに、何故彼女は注意されず私が注意されたのだろう。
周りを見た時点で、私の中のごめんなさいという思いは怒りに変わった。
確かに私は悪い。
知っていたにも関わらず、携帯電話禁止車両で携帯を使っていた。
だから、叱られたことに対して怒っているわけではない。
私だけが叱られたことに対して怒っているのだ。
何故、私だけが叱られなければならなかったのだろうか。
もしかして、若者や男の人に注意をするのが怖いから?
座っているからといって、携帯を使っている人を注意することを目的で車内の様子を窺っていたのであれば、
当然私以外の人も目についたはずだ。
にも関わらず私だけが叱られたということは、個人的に恨みでも持たれているか、
若しくは本当に若者や男の人注意することを怖がっているとしか思えないではないか。

 もしかすると、私は注意しやすいのかもしれない。
見るからに悪そうでもなく派手でもなく、注意されればちゃんと反省する程度の常識を持ち合わせている。
周りがどうこうではなく、自分が悪いことをしていればそれに対してきちんと反省するので
自分の言動を省みることのない人々のように『他の人も云々』と突っかかることもない。
理不尽に逆ギレもしないし、不意に叱られるとまずは縮こまってしまう。
そういうことが注意したくてうずうずしている人には伝わってしまうのかもしれない。
俺は人に注意したんだぞ!と優越感を感じたいと願っている人にはかっこうの餌食なのかもしれない。
私に注意すれば波風を立てられることもなく、自分は悪い奴をやっつけたのだと自己満足に浸っていられる。

 私の被害妄想なのだろうか。






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