扇風機

 この貧しい私が、なんと先日ついに扇風機を購入してしまった。
念願の扇風機である。

 そろそろ夏の電化製品がセールになる頃だろうと思って、自転車で20分程のところのホームセンターへ行った。
もう何年も扇風機などには興味がなく目もくれなかったので、扇風機の種類の多さに少し圧倒された。
電気屋さんではないので、扇風機の台数もそうたくさんはないはずなのに、
そこにはスリムファンだサーキュレーターだと私の知らない世界があった。
やれやれ時代の流れとは恐ろしいものよ、と思いながら物色していた。
ほとんどの扇風機がセールになっていたので、心置きなくどの形にしようか時間をかけてじっくり考えた。
まず、大きさ。
30cmにしようか25cmにしようか果てしなく悩んだ。
それから、種類。
スリムファンとやらは意外と大きかったため、昔ながらの扇風機にするかサーキュレーターとやらにするか、また悩んだ。
何度も何度も扇風機売り場をうろうろうろうろ徘徊して検討に検討を重ねた結果、
やっぱり30cmの昔ながらの扇風機にすることにした。
ところが、いざ箱を持ち上げようとすると、これがとてつもなく大きくて重い。
とてもじゃないが、自転車で坂道もあるでこぼこの道を20分も堪えられるようなシロモノではない。
その時点で、私の判断基準はあっさりと変更された。
とにかく、持ち運べる物。
これに尽きる。
その結果、私が持ち運べる箱は1つしかないことがわかったのだった。
サーキュレーション効果があるというボックス型の薄型扇風機。25cm。
同じもので30cmというのもあったのだが、30cmのものになると
もう箱が大きすぎて重すぎて持ち運ぶのは困難そうだったのだ。

 えっちらおっちら運んで帰って箱を開けた。
私は何故か「扇風機は組み立てるもの」と信じ込んでいたので、組み立てる気満々で開封した。
しかし、中にはちゃんと完成された四角い扇風機がちょこんと収まっていた。
少し拍子抜けしたものの、手間が省けたことを喜びながら早速コンセントを挿してスイッチオン。
微風・涼風・強風の3段階だったので、手始めに微風スイッチを押してみた。
びっくり。髪の毛が吹っ飛んだ。
微風は微風ではなかった。
どうやら、サーキュレーション効果がある扇風機における風量の度合いとは
微風は強風、涼風は暴風、強風は台風級(?)らしい。
微風だろうが強風だろうが、涼しいものは涼しい。
涼しいことが嬉しい。

 そこで、はっと気がついて愕然とした。
ボックス型扇風機はファンの部分が上下を向くようにできている。
だが、上下には回転してもこの形では首を振らないではないか。
一方向にしか風が吹かないのでは少し困る。
買う前にちゃんとチェックしなかった自分の浅はかさを呪いつつ扇風機の上についているスイッチを見てみた。
すると、一番端っこに「ルーバー」と書かれたスイッチがついていた。
何だこれは、と思いながらスイッチを押してみると、何と。
ファンのカバーの表面の更に表面部についている網状のカバーがくるくる回り始めて
風が四方八方へ散っていった。
しかも、普通の首振りのように左右のみならず、上下左右いたるところへ風が散る仕組みになっている。
素晴らしいじゃないか、この扇風機。

 購入時の判断基準が極めて即物的であったために、あまりじっくりと考えていなかったが、
自分の部屋に置いてみると、なかなかどうして感じがいいではないか。
形が四角くて背が低いため、従来の扇風機のように場所を取らない。
首を振らずに風だけを散らすので、目の端でちらちら動いて気になることもない。
全体的にすっきりとしていて、その割に風力は十分ある。
大きさも25cmでぴったりだった。
30cmだと私の小さな部屋にはいささか不釣合いだったに違いない。
かなり安かったのにとても実用的で私に合っている。
掃除機をかけるときに持ち上げても、もともと首がないので
従来の扇風機のように首の付け根の部分が「カカカカカカカカ」と音を立てて伸びていくこともないし
何より軽くて扱いやすい。

 と、そこで再び愕然とした。
このコンパクトで素敵な扇風機にはタイマーが付いていないのだった。
扇風機を引っくり返してタイマーのスイッチを探したがなかった。
説明書を隅から隅まで読んだが、やはりタイマー機能はなかった。
扇風機にタイマーは必ずついているものだという固定観念があったために完全に忘れていた。
まったくもって不覚だった。
しかし、ないものはないのだ。
仕方がないのでタイマーは諦めることにした。
ま、これも一つの勉強になる。
現代においてもタイマーのない扇風機が存在するということだ。
以後、もっと注意深くなることだろう。

 扇風機が訪れて以来、私の部屋には風が吹くようになった。
最近、クールビズに体が慣れてしまったのか、時々微風(強風)でもくしゃみが出ることがあるが
電気代節約のためにクーラーをつけずに毎晩暑さにうなされるよりはずっといい。
これで辛い辛い我慢大会とはおさらばだ!






back
back to TOP世渡り下手の物語







SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送