愛・地球博

 世で話題になっている地球博へ行った。
いろいろと情報を収集して少しは楽しみにしていたのだが、なかなか難しかった。

 それまでも少しずつ情報は収集していたが、約1ヶ月前に本格的に計画を立て始めた。
まずは訪れる日を決め、事前予約ができるということを聞いていたので、その方法を調べた。
私が唯一とてもとても楽しみにしていたのが「サツキとメイの家」で、それは完全予約制だということを知っていたので、
まずはそれを予約しようと思った。
そのしばらく前に仕入れた情報によれば、「サツキとメイの家」に関してはネット予約と葉書予約のどちらかを選択できるとのことだった。
私は当然ネット予約をするつもりだったのでやる気満々で地球博の公式サイトを訪れた。
愛・地球博の公式サイトは非常にわかり辛く作ってある。
必要な情報はあまり載っておらず、載っていても辿りつくまでに迷子になりやすい。
予約ページへ行くための入り口も見つけにくい。
最初、予約ページへの入り口を探し回ったが見つからず、クリックできる文字を片っ端からクリックしていくと、
単なるタイトルだとばかり思っていた目立たない小さな文字が実は重要な入り口だった。
その上、今では少しは改善されているが以前は「サツキとメイの家」の予約方法に関する情報は表面には出ておらず
探し回ってやっと見つけても情報量が非常に少なかった。
やっと辿り着いた「サツキとメイの家」の予約方法を見ると、予約方法は官製葉書のみになっていた。
応募者が多い場合は抽選で、しかも予約応募期間は1ヶ月半以上前からほぼ1ヶ月前までとなっている。
その上、入館予約の当選者の発表は入館予約券の発送を以って、とのことだ。

それから毎日、ネットでの事前予約の状況を確かめた。
ネット予約はきっちり1ヶ月前の午前9時から予約受付開始とのことだったが、
1ヶ月後が土日に当たる日に関して言えば予約開始から約1時間程度で全ての事前予約枠が埋まっていた。
それから、実際に自分がネット予約をする段になってわかったことだが、
サーバが混雑しすぎて何度やっても予約画面にアクセスできない。
何度も何度もページを更新してやっとアクセスできても途中で次画面に移る際にまたアクセスできなくなる。
何度も何度も同じ情報を叩き込んでやっと何とか最後の画面まで辿り着きそうになり、後は情報の最終確認だけかというところで
またアクセスできなくなり、また振り出しに戻る。
結局、私自身はずっとパソコンにかじりついていたにも関わらず、1つも予約できなかった。
午前9時といえば普通のサラリーマンは仕事中だろう。
しかも、午前中の一番忙しい時間帯ではないか。
私もバタバタと仕事をしながら会社の端末をちょっとお借りして予約に励んだが徒労に終わった。

そもそも、1ヶ月半も先の予定をほいほい立てられる人などそうはいないだろう。
それでも私の情報収集結果によれば、「サツキとメイの家」を楽しみにしている人は相当数いるだろう。
そういう人が何とか先の予定を立てることに成功して、無事葉書での応募も済ませたとする。
どうせ行くなら少しでもたくさんのパビリオンへ行こうと思う人も多いだろう。
少しでもたくさんのパビリオンへ行くためにはネットで事前予約をする必要がある。
そこで、忙しい仕事の合間を縫って非常にアクセス状況が悪い上に1時間で枠のなくなるネット予約に何とか成功したとする。
それほどまでに苦労して準備をして後は「サツキとメイの家」の抽選結果を待つだけとなり、毎日首を長くして待つ。
入館予約券が送られてくれば自分の当選がわかるからまだいい。
入館予約券はなかなか送られてこない、もしかしたら今日の午後くるかもしれない、
もしかしたら愛知から遠いところに住んでいるから配達に時間がかかっているのかもしれない、
明日にはくるかもしれない、もしかしたら郵便局側の事情で遅れているのかも…etc.etc。
そうして待ったのに、結局入館予約券がこなかったら、その人の落胆はどれほどのものだろうか。
せっかく苦労して準備をしたのに最大の目的を逃すなんて。
私なら馬鹿馬鹿しい気分になって恐ろしく気落ちすると思う。
入場券にICチップを組み込むなど時代の最先端をいくことをするかと思えば、官製葉書のみの応募など
時代錯誤も甚だしい方法をとったりして、何を目的としているのかさっぱりわからない。

 私自身は1つも予約できなかったものの、同行者が何とか1つ予約をとることに成功してくれたので、
密かに楽しみにしながら当日入場ゲートの前に立って驚いた。
ゲートの前には夥しい数の巨大なかごのような物が置いてあり、その中にはペットボトルが無数に入っていた。
何でも、地球博はペットボトル持込禁止だそうで、知らずに持ち込もうとした人の物を没収したのだろうが、
開場後30分程度の段階で既に恐ろしいくらいの量のペットボトルが捨てられていた。
あれは夕方頃にはどうなっていたのだろうか。
大体、ペットボトルはだめで水筒は持ち込んでもいいということになっているそうだが、どういう理屈なのだろう。
更に、入場ゲートの前に人が大量に列を為してちっとも前に進んでいない。
何事かと思ったら、空港にあるような金属探知機に一人ずつ通らせていた。
金属探知機だから金属に反応する。
しかし、時計やお財布を外すよう促されただけで、ベルトもピアスも指輪も特に外すようには言われなかった。
その結果、ほとんどの人が金属探知機を鳴らしていた。
探知機を通る前に鞄を開けさせられて中を点検される。
しかし、その点検の仕方は非常に適当で、鞄を開けさせて見えるところを見るだけだ。
本当に武器を持ち込もうと思ったら、ライフルのように巨大な物でない限り間違いなく絶対に持ち込める。
鞄は警備員の目視チェックだけで金属探知も何もない。
はっきりいって無意味なチェックだと思う。
世間へのアピールなのかもしれないが、無意味なことのためにゲート前に列を作らせるのは正しいことなのだろうか。

 やっとのことでゲートをくぐって中に入ることができ、混雑状況を確認しようと掲示板を見に行った。
すると、そこには「マンモスラボ整理券配布中」と書かれていた。
整理券?何じゃ、そりゃ。
そんなことは私が調べた限りでは載っていなかったような気がするが。
わけがわからないままに少し歩いたところにいたスタッフだか警備員だかに尋ねると
整理券はどこそこで配布している、近くまで行くとマンモスラボ専属のスタッフが誘導している、と言って
配布場所までの道順を丁寧に教えてくれた。
果てしない道程をひたすら歩いた。
どれだけ歩いてもどこにも誘導係りらしき人などいなかったので不安になって近くに立っていたどこかのスタッフの人に尋ねると
指をさして、あそこへ行くと看板を持っている人がいるから、と教えてくれた。
その先には高架があり、その高架の下の死角の場所に看板を持った人はいた。
やっとのことで整理券を手に入れて、整理券の何たるかを尋ねた。
整理券とは券に刻印されている指定された時間にそのパビリオンへ行けば待ち時間なしで入れるという
当日事前予約の類のものだと教わった。
それは予想通りの答えだったが、いつから整理券などというものが出てきたのかさっぱりわからなかった。
少し得をしたような気はしたが、何だか腑に落ちないものを感じながらほんの少し歩くと階段があり、
その階段の上に最初に丁寧に道順を教えてくれた人が立っていた。
何の理由からか一方通行になっていて階段を下りることはできず、上ることしかできないようになっていた。
大回りをさせられたことによって私達は何十分かの時間と労力を無駄に費やした。

 どんどん人は増えていき、どこも長蛇の列になった。
長蛇の列はある程度は覚悟していたのだが、中には5時間待ちというものも出てきた。
驚くことに長蛇の列のいくつかははパビリオンに入るための列ではなく
整理券をもらうために並んでいるものだった。
パビリオンに入るために並ぶとき、並んでいる人々の最後尾よりも随分前の位置から
鎖とポールで列ができたときに蛇行するように形づくられている。
まだ人が並んでいないところからずっとその鎖に沿って歩かされた。
当然、無駄な労力を省こうと鎖を跨いでショートカットする輩もいる。
鎖で形づくられた道幅は何故か異様に広く、人が並んでいても後ろから来た人が横から走って追い抜いていく。
そうすると、くそ真面目に鎖に沿って歩いている人間が殺気立つ。
しかも、その鎖はプラスチック製であり、ガキが引っ張ったり座ったりしてちぎれるらしく、
スタッフの人達が『ただ今鎖の修理に回っておりまーす!鎖がちぎれているところがあればお知らせくださーい!』
などと言って回っていた。
労力を使う場所が少々おかしいのではないか。
そして、長蛇の列はお手洗いの前にもあった。
女子トイレの前にはどこも常に目を疑うくらい長い列ができていた。
男子トイレの前にも時々列を見掛けた。
男子トイレはどうか知らないが、女子トイレはとにかく少ない。
建物自体もそれほどたくさんあるわけではないが、中が圧倒的に少ない。
あれでは列ができない方がおかしいと思う。

 やがて日は高く昇り、その日は真夏日だったこともあって喉が渇いた。
何箇所かに氷水でペットボトルを冷やして売っているところがあったが、一度そこで買ったところ、
回転がよすぎるのかあまり冷えていなかった。
また、何箇所かに自動販売機があったので自動販売機に近づくと、どこもここも売り切ればかりだった。
売り切れでないところも自動販売機の前に「冷やし中」と書かれた張り紙がしてあった。
ペットボトルの持込を禁止しているくせに中でもまともに販売しているわけではない。
脱水症状を起こしたくなければ、飲食店系のお店で売っている少量で250円や300円くらいする
小さなコップ入りの飲み物を買えということか。
地球博は地球には優しいかもしれないが人間には厳しいようだ。

 その日はひたすら歩き回り、迷子になり、お手洗いに行きたいのを我慢して、喉の渇きも我慢して、
何度か長蛇の列に混じり、くたくたになった。
いくつかのパビリオンを回って、私は何となく楽しんだ。
だが、もう二度と行きたいとは思わない。
けれども、パビリオンの中には専門家ならば非常に楽しめたものもあったようだ。
私は凡人なので普通程度に楽しんだ。
楽しめただけよかったと思う。

 いつから整理券制度など始まったのか、帰ってから調べてみた。
久しぶりに見た公式サイトの予約関係の情報は1ヶ月前、私が予約しようとした時と比較すると
かなりの情報が増えていた。
整理券について、という項目もいつの間にか付け加えられていたが、いつから始まったのか等
具体的なことは何も書いていなかった。
ネット予約の際、アクセスできないという苦情も相当数あるようで、Q&Aにもそのことが書かれていた。
しかし、Qに対して投げやりな感じのAもあり、改善する気が窺えないものもあった。
また、トヨタグループ館については、1ヶ月前までは確かに完全事前予約制ではなかったのに
先日調べたときにはいつの間にか完全事前予約制になっていた。
道理で掲示板のトヨタ館のところには待ち時間等が表示されていなかったわけだ。
これから行かれる可能性のある方は留意しておかれた方がいいだろう。
事前に予約はとれなかったけれど、当日並べば何とかなるだろうと思い込んで行ったら痛い目に遭うかもしれない。
地球博では、重要な変更が突然行われるらしい。

 それから、交通手段についてだが、いろいろと紛らわしく書いてあるが、解読すれば単純だ。
「エキスポシャトル」なるものについて私は最も悩んだ。
名前はバスっぽいが、本当にバスなのだろうか。
バスではなく電車だとすれば、特別な名前がついているのだから特別なホームから出るのだろうか。
等々、必死で調べた。
何のことはない。ただの電車だ。仰々しい名前がついているだけで、単なる急行か快速電車のようなものに過ぎない。
県外の人間には何がどうなっているのかわかりにくいが、行って蓋を開けてみるとそういうことだった。

 私が唯一感心したことがある。
それは何かというと道路の綺麗さである。
ごみ一つ落ちていない。
しかも、テーマパーク等でよく見掛けるように清掃専門のスタッフが道路を掃除して回っているわけでもない。
誰がどこでどう操作しているのか知らないが、よくあれだけの人間が集まって
あれほどごみのない状態を保つことができるものだ、と感動した。
ごみ箱の前には大体おじさんが立っていてごみの分別を指導してくれているが
ごみ箱の数は決して多くない。
それなのに、ごみはほとんど落ちていなかった。
朝もお昼も夕方も晩も、ずっと同じように綺麗だった。
私が唯一感動した部分だった。

 地球博を訪れて、運営の効率の悪さが目についた。
平日はどうか知らないが、毎週末あのように効率の悪いことを繰り返しているのだろうか。
残りの期間のできるだけ早い時点で少しでも改善を図った方がいいと思う。
入場者数は予想を下回っているようだが、悪い噂は更に悪い噂を呼ぶ。
これ以上入場者数が減っても困るだろうし、
後々まで妙な汚名を残しても構わないのであればいいが
そうでないならば一刻も早く体制を改善した方がいいのに、と思う。






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