中途半端

 仕事で AUTO CAD LT FOR WINDOWS というソフトを使用する機会に恵まれた。
恵まれたというか不可抗力というか。
ある日、『CAD使ったことある?』と聞かれて『いいえ、全然』と答えると、
紙に描かれた図面と1冊の本を渡されて『これで勉強して一度やってみて』と言われたのだ。

 CAD。
それを図面を描くためのソフトであるという程度の認識しか持っていなかった私は面食らった。
そもそも図面の見方さえ知らないのに、なんて無謀な。
しかも、CADを仕事で使っている友人はCADの専門学校に通ったという話すら聞く。
それを私に本を見て勉強しながら使えというのか。
ああ、どうしようどうしよう、困った困った。
私は本当に困ってしまった。
本を見ながら励んでみたが、やはり初歩的な部分からどうしてもわからないことがある。
窮して仕事でCADを使っているという一人の友人に助けを求めた。
しかし、CADと一言で言っても実はいろいろな種類があるのだろうか、
友人からは『AUTO CAD LT FOR WINDOWSは過去にほんの一瞬使ったことはあるけれど
ほんの一瞬だからわからない』という返事が返ってきた。
CADに種類があることさえ知らなかった…。
またまた振り出しに戻って改めて困った私は本と図面とパソコンの画面と睨めっこをした。

 確か、ACCESS を手がけることになったときも同じような始まりだった。
当時の上司から『ACCESSって知ってる?』と言われたことから始まって
『いいえ、全然』
『便利なんやって』
『へぇ、そうなんですか、そりゃよかった』
『仕事がやりやすくなるかもしれへんよ』
『ああ、そうでしょうね、でも忙しいし勉強する時間ありませんよ』
という冗談のようなやり取りをしていたのだが、何だかそのまま流すのが悔しくなったことと
ACCESS の今後の使い道や諸々の事を考慮して、当時は恐ろしく少なく貴重だった休日に
本を買いに行って勉強を始めたのだった。

 そんな時代を思い出しながら毎日のように本と画面と図面と睨めっこしていると、
読書百遍、ではないが少しずつ足がかりが掴めてきた。
ような気がする。
初めは扱いにくくて見にくく思えたCADの画面も慣れるとなかなか素直でかわいらしいじゃないか。
こうなると私の悪い癖で微に入り細に渡って細かく細かく中に入っていきたくなるのだ。
無論、自分で勝手に足がかりが掴めてきたという気がしているだけで
実際は全然そんなことはないのかもしれないが、そんなことは問題ではない。
一種の自己満足の世界だ。
こんなのでいいのだろうか、と思いながらも何となくそれらしい形ができると嬉しい。
その程度である。
とはいえ、わからないところはやはりわからない。
大体、きっと図面の見方も知らないようなド素人に何とかできるような代物ではないのだろう。
これでいいのか、これでいいのか、と頭を抱えながら少しずつ前進している。

 だが、残念なことに、CADも志半ばで終わることになりそうだ。
また、使い物にならない中途半端な知識が一つ増えてしまった。

 今日はいいお天気だ。






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