男子高校生

 電車でオヤジのような男子高校生を見た。
制服を着崩しているわけでもなく、髪型も必要以上に技巧を凝らしている様子もなく、
外見的には高校生らしく見えてみだしなみの悪くない少年だった。
少年は、駅のホームで列に並んで電車を待っていた。
やがて電車がホームに近づくと、少年は少しずつ列から外れて前ににじり出て行った。
それでも、人の前に割り込むわけでもなく、さほど目立つ行動ではなかった。
電車が停まり、降りる人が降り始めると、少年は並んでいる人々の背後から回り込んで電車に乗ろうとした。
そうやって本来の順番よりもかなり早く乗り込んだ少年は、恐らくお気に入りの位置なのであろう、
人にぶつかりながらもドアのすぐ横に自分の場所を確保しようとした。
だが、一足違いで先に乗った人に場所を取られ、その人に衝突した。
彼は別に申し訳なくもなさそうな顔で儀礼的に頭を下げるように適当に首をちょこちょこ振りながら
『すんません、すんません』と言っておとなしく奥に入って行った。
その後、妙に落ち着きなく辺りを見回していたかと思うと、ほんのわずかなスペースが空いている席の前まで行き、
またもや儀礼的に適当に首を振りながら『すんません、すんません』と言って無理やり座った。
座ってからも、少しずつ場所を譲ってくれた周囲の人に向かってだろうか、『すんません、すんません』と首を振った。
それが済むと、少年は持っていた鞄を足元にどすんと下ろすと、腕を組んで眠りについた。

 偶然、その少年が私の周りでうろうろしていたために、私は彼の行動を自然と目で追ってしまった。
そして、その一連の行動があまりにも私の持っている「オヤジ」のイメージと合致していたので
面白くて笑いそうになってしまった。
丸まった背中、
疲れきった表情、
表では体裁を整えながらも裏では自分に利があるように計らおうとする姑息さ、
明らかに悪いと思っていないのに表面上は適当に謝ってその場を取り繕おうとするしたたかさ、
取った行動の計算高さ、
図太さ、
それら全てが高校生のものではなかった。

 彼は人生のどの時点で本来持ち得る少年らしさを失ってしまったのだろうか。
高校生であれならば、大人になったとき彼はどうなっているのだろうか。
将来の「オヤジ」の姿を想像してみた。
楽しいものではなかった…。

 電車に乗っていると、考える題材に事欠かない。






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