女子高校生

 先日、電車に乗っていると女子高校生が二人乗ってきた。
彼女達は乗り込むなりドアを背もたれにどっかりと地べたに腰を下ろし、短いスカートであぐらをかいた。
二人とも何年も洗っていないような汚れのこびりついた不潔そうな制服を着ており、
その制服や鞄のいたるところにショッキングピンクや紫色や黄色の落書きが施されていた。
背中いっぱいに「妖」やハートのマークや「○○命」等の短い言葉が大きく書かれているかと思えば、
鞄にはどう見てもまったく意味を成さない長文が細々と書き綴られていた。
彼女達のいでたちは、落書きいっぱいの非常に汚らしい制服・恐ろしく短く汚いスカート・薄汚れた白い靴・
ブレザーの袖口から覗く黒ずんで破れた白いセーター、
それに、綺麗にパーマを当てて着色(脱色?)をしてセットをした髪・明らかに人為的に整えられた眉・
丁寧に塗りたくられた厚化粧・徹底的に手入れをされた爪に塗られたマニキュア
という風だった。
その対比が私には印象的だった。今でも脳裏に焼きついている。
一人は携帯に貼られたプリクラを剥がしたり爪の手入れをしたりし、もう一人はまつげにマスカラを塗りながら、
二人はずっと大声で他人の噂話や悪口を言っていた。
混んでいる車内だったが、駅に着いて彼女達の背中のドアが開いても
立ち上がることもどくこともせず、ひたすら傍若無人に振舞っていた。
彼女達ほどあまりにも頭の悪そうな高校生を見たのは初めてで、衝撃のあまりじっと見入ってしまった。
もしも、こんな物が日本の女子高校生だと世界に広まったら…、と思うと、
情けないというよりも嫌悪感を感じた。
しかし、反面、そんな彼女たちにどこか羨望を感じる自分がいた。
彼女達はとても自由そうだった。
世界は自分を中心に回っているのだと信じて疑っていないかのように思えた。
それが羨ましかった。
私も高校生くらいに少しは傍若無人に生きてみればよかった、と思った。
断じてあそこまで馬鹿になりたくはないが、もう少し何も考えずに自分勝手に振舞えばよかった。
そうすれば、少しは人生が変わっていたかもしれない。
今より少しは強く逞しく自己中心的で無作法で傍若無人で無神経な思考回路ができていたかもしれない。

 道を踏み外すには、少し遅過ぎた。

 昨日、電車に乗っていると女子高校生が二人乗ってきた。
非常に礼儀正しく降りる人が全員降りてから乗り込んで端っこの方に陣取った。
彼女達はきちんと制服を着こなし、一人は優しいベビーピンクのマフラーをふんわりと首に巻いていた。
二人とも人の邪魔にならないように鞄を持ち、周りの人の迷惑にならないように
小声でその日の学校での出来事などを話していた。
髪もそれほどは加工されておらず、全体的に清楚な印象を受けた。

 何となく、ほっとした。






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