サンタさん

 明日はクリスマス。

 幼い頃、クリスマスの朝起きるのが楽しみだった。
ベッドを飛び出してパジャマも着替えずにリビングルームへ駆け込むと、
暖炉の前のクリスマスツリーの下にプレゼントが置いてあった。
ずっと、クリスマスプレゼントはサンタさんがくれるものだと思っていた。

 今でもその時のことをかなり鮮明に覚えているが、ある年のクリスマスイブの夜遅く、
二段ベッドの上の段でいつまでもごそごそとなかなか寝ようとしない3つ違いの兄に
私は怒って言った。
『早く寝てよ。いい子にしないとサンタさん来てくれないじゃない。
お兄ちゃん一人ならどうでもいいけど、同じ部屋でごそごそしたら
私まで悪い子だと思われてサンタさんがプレゼントくれなかったら困るでしょ』
兄は二段ベッドの上の段から上半身だけを下に垂らして私を馬鹿にした。
『馬鹿じゃないの?サンタさんなんていないんだよ。
クリスマスプレゼントを置いてるのはお父さんとお母さんなの。
これだからガキは何も知らなくて困る。ふんっ』

『うそだ。サンタさんいるもん』
『いません〜』
『なんでそんなことお兄ちゃんにわかるのさー』
『そんなの常識。それに、お兄ちゃん見たもん。お父さんがプレゼントを置いてるの。
大体さ、世界中の子供にプレゼントをあげるとしたらそのお金は誰が出すの?』
『…。でも、お母さんがいい子にしないとサンタさん来ないって』
『あのねー、じゃ証明できるの?できるなら今晩サンタさん捕まえてよ』
『サンタさんは子供が寝ている間にしか来ないから見えないの』
『はぁ…。馬鹿馬鹿しい。馬鹿は相手にしてらんない』

 そうやって、私は物的贈り物をくれるサンタさんなど存在しないのだと知った。

 しかし、物的贈り物をくれるサンタさんは存在しなくても
幸せを運んでくれるサンタさんは実はどこかにいるのではないだろうかと
大人になって人々を観察するようになってから思うようになった。
そのサンタさんはとても気まぐれで、皆に平等なわけでもなく、
全員に幸せを運ぶわけでもない。
現実に幸せなことに遭遇できる人もいるかもしれないし、
幸せな夢を見るだけの人もいるかもしれない。
何もなく普通に日が流れるだけの人もいる。
尤も、世界の人口を考えると毎年全員に同時に平等に幸せをもたらす方が
難しいことも頷けるのだが。
だから、同じクリスマスでもいっぱい幸せを感じる人もいれば、
特に幸せを感じない人もいるのではないか。

 我ながら、いい年をして、しかも自分に似合わずメルヘンだと思うが、
今日はクリスマスイブだ。
私のような人間でも、ほんのちょっぴり夢を見ることくらい許されるだろう。(笑)

 May all your wishes come true. (と言いたいが、これではちょっと恐ろしいことになるので)
 May all your good wishes come true.

 Merry Christmas...






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