自作パソコンのその後

　「ついに完成した」はずだったパソコンくんの調子がどうにもこうにもよくなかった。
電源を切るときに最後の最後でフリーズしてしまったり、
（尤も、それはＯＳを入れ直せば大丈夫なことがわかっているのでたいしたことはないが）
ＵＳＢマウスを使っているのだが、マウスの動きが非常に悪く、しばらく動きを止めていると
そのまま動かなくなってしまうという症状が起きていた。
別のＵＳＢに繋ぎ直すとまたしばらくは動くのだが、また同じ症状が起きる。
何度も何度もＸＰやマザーボードのドライバを入れ直したり配線を確認したり
マウスやＢＩＯＳの設定をいじったりしたが、一向に改善せず
いろいろと調べた結果、もしやこれはマザーボードの初期不良ではないか、という結論に辿り着いた。
だが、なにぶん素人なもので『これは初期不良だ！』と断定するほどの自信もなく、
しかし、他に原因がわからなかったので、既に二度組み立てたパソコンくんをまた全て分解して
マザーボードを買ったお店の持ち込み専用のサポートフロアに持ち込んでみた。

　お店のサポートのおにいさんはとても親切で、ああでもないこうでもないと
マザーボードを非常に丁寧に詳しく調べてくれた。
結局、初期不良ではないことが判明しただけで具体的な原因はわからないまま
『とりあえず、一度ＸＰを入れ直してみて』と言われた。
別にその人が悪いわけではないのに、
『何もわからなくてごめんなぁ』と言われて、こちらの方が申し訳なかった。

　そして、三度目の組み立てが完了した。
すると、どうしたことか今度は音が一切出なくなった。
配線を幾度も幾度も確認したが、どう考えても二度目に組み立てたときと同じだ。
マウスの問題については、ふとした拍子にＵＳＢの「電源の管理」というものをいじってみたところ、
あっさりとスムーズに動くようになって一件落着したのだが
音が出ないというのがどうにもこうにも寂しい。
サウンドチップとやらがマザーボードに内蔵されているので、
何度もマザーボードのドライバを入れ直してみたり、いろいろと調べたり
自分のわかる範囲内であらゆる可能性を試したが何も変わらず、
結局、何度も組み立てたり分解したり持ち運んだりしているうちに破壊してしまったのだろう
サウンドカードを買って取り付ける以外どうしようもない
という情けない結論を下した。

　どうせ、私はデストロイヤーさ、と自分の乱暴さを省みながらいじけつつも
諦めきれずにしつこくマザーボードのメーカーにメールを送って尋ねてみたり、
買ったお店のサポートに電話をしたりした。
マザーボードのメーカーは電話での問い合わせは受け付けない、メールで、
というのでメールを送ったのだが、結局放置されたようで未だ連絡はない。
お店の電話によるサポートセンターはお店とは別の場所にあるのだが、
ずっと話中で電話が繋がらなかった。
メールでの問い合わせも受け付けるということだったのでメールを送ったが、返事がこない。
そこで、買ったお店自体に電話をして事情を説明すると
本来は電話での問い合わせは受け付けていない、持ち込み専門のサポートに繋いでくれた。

　そのサポートの人は電話で早口で非常に迷惑そうに（そりゃ、そうだろう）、
しかし、必要なことを教えてくれた。
言われるままにジャンパというものをいじって初期の設定に戻したり、配線を確かめたり。
すると、魔法のようにスピーカーから音が出た。
とても忙しそうなことが電話ごしに伺えたので、途中からはやるべきことだけ聞いて
『助かりました、ありがとうございました』と言うと、
『ふん、原因はわかりませんが、まぁ頑張って』と言って話は終わった。

　マザーボードのメーカーは、間違ったマニュアルを出すくらいだし、いい加減なのだろう。
そのいい加減さを確かめたいという思いもあって、問題が解決した旨のメールは敢えて送らなかった。
結果的に、その後何の連絡もなく今に至っているところをみると、余程いい加減な会社なのだろう。
マザーボードを買ったお店のメールのサポートには、解決したのに煩わせては悪いと思い、
買ったお店で教えてもらって問題は解決したのでもう連絡は結構です
という旨、お礼の言葉も添えて簡単に報告のメールを入れておいた。
すると、「毎日何千通もメールが舞い込んで処理に追われている、順番がある」という内容の
言葉だけは馬鹿丁寧な、氷のように冷たい返事が返ってきた。
だから、連絡は結構だと言ったのに…。

　こうして、たくさんの人を巻き込み、迷惑をかけて、本当に「ついに完成した」。
音は問題なく出る。
ＵＳＢマウスの調子は極めて良好。
電源は非常にスムーズに最後まで切れる。

　自力で完成させたわけではないのが情けないが、完璧だ。
ケースの蓋のネジはようやくしっかりと締められた。

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