夕暮れの公園と妙なおじさん

 毎日の犬のお散歩コースの途中に公園がある。
その公園に、数年前から怪し気な萎びたおじさんが出没するようになった。

 おじさんは様相も奇妙だが行動も異様だ。
ほとんど毎日、夕刻になると古ぼけた自転車に乗ってふら〜っと現れる。
私はその公園を往復通りかかるのだが、大体私と僅差で現れるようだ。
行きに通りかかったときにいないと思ったら、帰りに見かける。
同時に到着したこともある。
そういうわけで、否が応でも目について非常に気になるのだ。

 そのおじさんは1年を通して着古したような長袖を着ている。
いつも帽子を目深にかぶり、白いマスクをしている。
薄暗がりの公園にそのような人がいるだけでも近寄りがたいのに、
彼の場合はそこから更に異様な雰囲気を醸し出すのだ。

 公園に到着すると、自転車のかごからおもむろに道具を取り出す。
道具は日によって違うらしい。
ある時は木刀、ある時は鞭のような物、ある時はヌンチャク。
ちなみに、道具としてはヌンチャクが一番日が浅い。

 公園の柱に布を巻きつけ紐で固定してから、木刀や鞭や素手で柱を打つ。
3年程前に初めてヌンチャクが登場したとき、振り回す度に腕や足に絡みついていた。
それが、数日前に久しぶりにヌンチャク捌きを見たのだが、格段に上達していて驚いた。
私は本物のヌンチャクを見たことはないし、その使い方も全然知らない。
しかし、数日前に見たおじさんは飛んだり跳ねたりしながらヌンチャクを振り回しても
どこにも絡まらずに一つの流れができていた。
木刀の振り方にしても、これは私はある程度知識があるのだが、
最初の頃と比べると少しは様になってきているように思う。

 それにしても、一体何者なのだろう。
目的は何なのだろう。
ただの体の鍛錬にしては、あまりにも異様だ。
様子を見る限りでは、どこかで正式に習ったりしているようには思えない。
いつも、まるで誰かと闘っているかのように真剣だ。
大体、鞭や木刀やヌンチャクって…。

 帽子やマスクだけの問題でなく、全体的に少し薄汚れた感じのおじさんが
鞭や木刀やヌンチャクを振り回している夕暮れの公園は、はっきりいって気味が悪い。
今のところ誰かに危害を加えたり問題になったりはしていないようだが、
子供がたくさん集まる場所なのに、何か起きたらどうするんだろう。
物騒な世の中なだけに、他人事ながら気になる。

 公共の場所でのことだし、道具が兵器になっている様子もない以上、
ただ不気味だというだけでそういう行為を咎めることはできないだろうが、
私個人としては、単なる興味本位で理由や目的を一度聞いてみたい気がする。

 そうは言うものの、どうかそんな機会に恵まれませんように…。






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